プロテイン

プロテイン: protein)は、広義にはタンパク質を指すが、本項ではサプリメントとしてのプロテインについて述べる。

概要[編集]

プロテイン粉末(写真中央)をシェーカーに入った牛乳(写真左)に入れ、シェイクして(よく振って)、溶かしたところ(写真右)

プロテインは、タンパク質を主成分とした粉末である。通常、タンパク質の補給を目的として[1]牛乳ジュースなど好きな飲み物を入れたプロテインシェイカーにプロテイン粉末を溶かして飲用される。タンパク質以外にもビタミンミネラルその他の栄養素も含む場合も多い[2]。関連商品として、プロテイン粉末を練り込んだプロテインバー[3]やプロテイン入りゼリー[4]などもある。

プロテインの歴史[編集]

  • 1838年、オランダのG.J. Mulderによって初めて化学論文にタンパク質(protein)という語が使用された[5]。用語の作成者はスウェーデンのJ.J. Berzeliusである[5]
  • 1950年代以降、牛乳からチーズカゼインを製造する際に排出される乳清中のタンパク質の濃縮、分離の技術が急速に発達し、食品素材として本格的に利用され始めた[6]
  • 1970年代にはWPC、WPI(後述)が製造可能となった[6]

プロテインの主な種類[編集]

ホエイプロテイン[編集]

牛乳由来の動物性タンパク質[7]。水に溶けやすく[8]約2時間で吸収される[9]。タンパク質以外に脂質、ビタミン、ミネラルなども含まれる[7]。分岐鎖アミノ酸(BCAA)が豊富である[7]。筋肉合成速度はソイプロテインより早い[10]。牛乳アレルギーでない人向け。

ホエイプロテインの種類[編集]

  • コンセントレート(WPC)
ホエイプロテインを濃縮したもの[8]。そのためラクトース(乳糖)が一番多く含まれている。タンパク質の含有量は約70%[8]
  • アイソレート(WPI)
WPCをイオン交換法等で分離したもの[8]。タンパク質以外の成分をほぼ除去しているため、乳糖不耐症の人にも適している。タンパク質の含有量は85~90%[8]
  • 加水分解ホエイプロテイン(ハイドロリセート)(WPH)
WPIを一部、ペプチドアミノ酸に分解したもの[8]。最も消化吸収に優れ、タンパク質の含有量は約95%[8]

カゼインプロテイン[編集]

牛乳由来の動物性タンパク質[7]。ホエイプロテインに比べると水に溶けにくく[11]、BCAAの含有量が少ない[7]。7~8時間かけてゆっくり吸収され[12]、筋肉にアミノ酸を届けるという特徴を持つ[7]。牛乳アレルギーでない人向け。

ソイプロテイン[編集]

原料に大豆を使用[7]。ホエイプロテインに比べると水に溶けにくく[11]、吸収が遅いため腹持ちが良く減量にも適している[7]。大豆アレルギーでない人向け。

ピープロテイン[編集]

原料に黄色エンドウ豆を使用[13]。ホエイプロテインに比べるとメチオニンの含有量が少ないが[13]、アレルギーの可能性が低いとされる[13]

用途[編集]

筋肉の強化・増量[編集]

アスリート等が競技のパフォーマンス向上のためのトレーニングや、ボディービルダー筋肉を肥大化させる目的で行う筋力トレーニング等と共に消化吸収の早いホエイプロテインが飲用される[14]

タンパク質の補給[編集]

不摂生や偏食その他の理由により食事から摂取するタンパク質の量が少ないと思われる場合等にプロテインで補う[15]

高齢者向け[編集]

食事量の減少などに伴い筋肉が減りがちな高齢者に対し、その対策として軽い運動と共にプロテインの適量の摂取を推奨する動きもある[16]

ダイエット[編集]

食事量が多く、余分な脂肪炭水化物を摂りすぎてしまう場合、1食をプロテインに置き換えることで脂肪や炭水化物の摂取を抑える[17][18]。食事とプロテインを一緒に摂ると脂肪量がより減少することが示唆されている[19][20]。またホエイプロテインを3ヶ月以上継続摂取すると食欲を抑える効果があり[21][22]、ソイプロテイン等の大豆製品がアジア人女性に対して高いダイエット効果があることが示唆されている[23][24]

用法[編集]

一般的な飲み方[編集]

飲む直前に、シェイカーに先に水や牛乳などを入れたのち、規定量のプロテイン粉末を入れて混ぜる[25]。作ったプロテインは長時間放置せずその都度飲み切る[25]

特殊な飲み方[編集]

ビルダー飲み[編集]

プロテイン粉末を直接口内に放り込み、水で流し込むビルダー飲みという方法がある。シェイカーを必要としないためプロテイン粉末と飲料さえあればどこでもプロテインの摂取ができるものの、粉末を口に入れる際に溢れたり、むせて吹き出すなどして上手く飲めず周りを汚したり味が不味いなどデメリットが多い[26]

用量[編集]

1日あたりの量[編集]

  • 筋トレによる筋肉の増量を目指す場合は1日あたり体重1kg×1.6g以上が推奨される結果が示唆されているが[27][28][29]、筋力の向上については1日あたり体重1kg×1.5gが効果のピークとなり、それ以上を摂取しても効果は上がらないことが示唆されている[27][28]
  • 特に運動をしていない場合でもタンパク質は消費されるため、最低でも1日あたり体重1kg×0.8g程度の摂取が必要とされる[30]
  • サッカーを行う選手のたんぱく質必要量は目安として体重1kg×1.5~2gほどと言われている[31]

1回あたりの量[編集]

  • 一般的には1回あたり20g前後で摂取される場合が多い[32][33]

一度に吸収できるタンパク質の最大量についてはある程度決まっているとされるものの様々な説があり[34]

  • 除脂肪体重の0.7倍(g)[34]
  • 体重の0.7倍(g)(米スポーツ医学会)[34]
  • 40g(就寝前)(国際スポーツ栄養学会)[34]
  • 約40~50g[35]

これらが上限とされている。

また、下半身の筋トレにおいて20g以上のプロテインを摂取しても筋タンパク合成速度に有意な差は見られなかったが[36][37]、全身性の筋トレにおいては20gより40g摂取した方が筋タンパク合成速度の上昇が見られた[36][38]とする結果もあり、トレーニングの差異により必要量も増減すると考えられる。

摂取タイミング[編集]

  • 一般的には朝の起床時と夜の睡眠前の摂取が効果的とされる[39]
  • 筋トレをする場合に、筋トレ直前と筋トレ直後のいずれかのタイミングでプロテインを摂取した場合、どちらの場合でも筋肥大効果が発揮されることが確認されている[40][41][16]。また、その24時間後も筋タンパク質の合成感度が高い状態で維持されることが示唆されている[42][43]
  • 筋トレ直後とそれ以降に様々な一定間隔で一定量のプロテインを摂取する実験においては、3時間おきに20gを摂取した場合に筋タンパク合成率が最も高くなることが示唆されている[19][44]

プロテイン料理[編集]

飲み物に混ぜる以外にも、ホットケーキお好み焼き粉等にプロテイン粉末を混ぜたり、その他プロテインを使用した料理としても活用できる[45][46]

注意点[編集]

  • プロテインはあくまでも補助食品であり、通常の食事を摂らずにプロテインのみを摂取することは推奨されない[47]
  • タンパク質を一度に大量に摂ると消化しきれず余った分は体脂肪となる[48]
  • プロテインの摂取により腎臓に負担がかかるという説がある[49]
  • 体重1kgにつき2.8g以上のタンパク質を毎日摂取すると腎結石になる危険性が高まるとされる[50]
  • プロテインの過剰摂取は内臓疲労肥満尿路結石、腸内環境の乱れを起こす可能性がある[51][52]

脚注[編集]

  1. ^ プロテインはなぜ飲む?プロテインを飲む理由とおすすめのプロテイン森永製菓のプロテインのポータルサイト
  2. ^ プロテインにはビタミンが含まれている?ビタミンを配合しているプロテインを紹介森永製菓のプロテインのポータルサイト
  3. ^ プロテインバー活用のメリット・デメリットを解説森永製菓のプロテインのポータルサイト
  4. ^ ザバス プロ リカバリープロテインゼリー株式会社 明治
  5. ^ a b 遺伝学年表遺伝学電子博物館
  6. ^ a b 清澤功「ホエータンパク質濃縮物とその機能性に関する最近の研究動向」『ミルクサイエンス』第51巻第1号、日本酪農科学会、2002年、1頁、doi:10.11465/milk.51.13ISSN 1343-0289CRID 1390001205509246592 
  7. ^ a b c d e f g h プロテインって何?「使ってみたい」という高校生アスリートのための基礎知識アスレシピ
  8. ^ a b c d e f g WPC・WPI・WPHって?ホエイプロテインの種類と特徴アスレシピ
  9. ^ 女性におすすめのプロテインの選び方ロート製薬オンライン
  10. ^ 筋肉・筋力低下のリスクとその維持・向上に効果的なミルクプロテイン株式会社 明治
  11. ^ a b プロテインが溶けない?溶けにくいときの2つの対処法森永製菓のプロテインのポータルサイト
  12. ^ スタミナ抜群の「カゼイン」プロテインとは森永製菓のプロテインのポータルサイト
  13. ^ a b c 植物性プロテインとは?種類・メリット・おすすめの植物性プロテインを紹介森永製菓のプロテインのポータルサイト
  14. ^ プロテインで筋トレ効果アップ!仕組みやおすすめの摂取方法glico
  15. ^ プロテインは食事のサポート役!プロテインの代わりになる食べ物は?代わりにしたときの栄養素は?森永製菓のプロテインのポータルサイト
  16. ^ a b 藤田聡「筋萎縮に対する運動・栄養介入:基礎研究の最新エビデンスと現場での応用」『日本基礎理学療法学雑誌』第18巻第2号、日本基礎理学療法学会、2015年8月、3-8頁、doi:10.24780/jptf.18.2_3ISSN 2186-0742CRID 1390845713003832832 
  17. ^ プロテインダイエットとは?置き換え方の正しい方法を学ぼう!森永製菓のプロテインのポータルサイト
  18. ^ プロテインダイエットの正しい方法、食事の置き換え方は?glico
  19. ^ a b 筋トレによる筋肥大と除脂肪の効果を最大にする「プロテインの摂取パターン」を知っておこう!リハビリmemo
  20. ^ Hudson, Joshua L; Bergia, Robert E, III; Campbell, Wayne W (2018-04). “Effects of protein supplements consumed with meals, versus between meals, on resistance training–induced body composition changes in adults: a systematic review”. Nutrition Reviews 76 (6): 461-468. doi:10.1093/nutrit/nuy012. ISSN 0029-6643. https://doi.org/10.1093/nutrit/nuy012 2023年5月26日閲覧。. 
  21. ^ ダイエットで食欲を抑えたいならタンパク質を摂取しよう!【最新エビデンス】リハビリmemo
  22. ^ Mollahosseini, Mehdi; Shab-Bidar, Sakineh; Rahimi, Mohammad Hossein; Djafarian, Kurosh (2017). “Effect of whey protein supplementation on long and short term appetite: A meta-analysis of randomized controlled trials”. Clinical nutrition ESPEN (Elsevier) 20: 34-40. doi:10.1016/j.clnesp.2017.04.002. https://doi.org/10.1016/j.clnesp.2017.04.002 2023年5月26日閲覧。. 
  23. ^ ソイ・プロテインなどの大豆食品によるダイエット効果の最新エビデンスリハビリmemo
  24. ^ Mu, Yuze; Kou, Tingyan; Wei, Boyang; Lu, Xuezhao; Liu, Jingyao; Tian, Huimin; Zhang, Wenwen; Liu, Bingkun; Li, Huihui; Cui, Wenbo; others (2019). “Soy products ameliorate obesity-related anthropometric indicators in overweight or obese asian and non-menopausal women: A meta-analysis of randomized controlled trials”. Nutrients (MDPI) 11 (11): 2790. doi:10.3390/nu11112790. https://doi.org/10.3390/nu11112790 2023年5月26日閲覧。. 
  25. ^ a b プロテインの飲み方を紹介。基本+アレンジ飲みで飽きずに摂取!森永製菓のプロテインのポータルサイト
  26. ^ 【悲報】ビルダー飲みで栄養素の吸収率が高まるのは嘘!デメリットや飲み方のコツを紹介T-BALANCE
  27. ^ a b 筋トレによる筋力増強の効果を最大化する「タンパク質の摂取量」を知っておこう!【最新エビデンス】リハビリmemo
  28. ^ a b Tagawa, Ryoichi; Watanabe, Daiki; Ito, Kyoko; Otsuyama, Takeru; Nakayama, Kyosuke; Sanbongi, Chiaki; Miyachi, Motohiko (2022). “Synergistic Effect of Increased Total Protein Intake and Strength Training on Muscle Strength: A Dose-Response Meta-analysis of Randomized Controlled Trials”. Sports Medicine-Open (Springer) 8 (1): 110. doi:10.1186/s40798-022-00508-w. https://doi.org/10.1186/s40798-022-00508-w 2023年5月26日閲覧。. 
  29. ^ プロテインの必要量や摂取タイミングの誤解東京医療保健大学
  30. ^ あなたに必要なタンパク質と糖質の最適な量とは森永製菓のプロテインのポータルサイト
  31. ^ サッカーにおすすめなプロテイン6選!サッカー選手におすすめな選び方も徹底解説!! - IFサッカー塾”. ifsoccerschool.online (2023年7月14日). 2023年8月4日閲覧。
  32. ^ 豆知識コーナーglico
  33. ^ プロテインどのくらい飲んだらいいの?? 自分に適した量のタンパク質を把握して摂取しよう!ALPRON
  34. ^ a b c d プロテインは分けて飲む!が鉄則!1回の吸収量はどのくらい?武内製薬株式会社
  35. ^ 吸収率を高めるタンパク質の種類・方法とは。違いや役割を理解して上手に摂取魚肉たんぱく研究所
  36. ^ a b 3-2.プロテインの効果的な摂取量とは?DNS ZONE
  37. ^ Moore, Daniel R (2009年1月). Ingested protein dose response of muscle and albumin protein synthesis after resistance exercise in young men. doi:10.3945/ajcn.2008.26401. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0002916523239209?via%3Dihub. 
  38. ^ Macnaughton, Lindsay S (2016年8月10日). The response of muscle protein synthesis following whole-body resistance exercise is greater following 40 g than 20 g of ingested whey protein. doi:10.14814/phy2.12893. https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.14814/phy2.12893. 
  39. ^ 最適なプロテインの摂取タイミング森永製菓のプロテインのポータルサイト
  40. ^ タンパク質の摂取タイミングは「筋トレの前と後」のどちらが効果的か?【最新エビデンス】リハビリmemo
  41. ^ Wirth, Janine (2020年6月). The Role of Protein Intake and its Timing on Body Composition and Muscle Function in Healthy Adults: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Controlled Trials. doi:10.1093/jn/nxaa049. https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022316622021897?via%3Dihub. 
  42. ^ 筋トレ後のタンパク質摂取は「24時間」を意識するべき理由リハビリmemo
  43. ^ Tipton, Kevin D (2003年1月1日). Acute response of net muscle protein balance reflects 24-h balance after exercise and amino acid ingestion. doi:10.1152/ajpendo.00234.2002. https://journals.physiology.org/doi/full/10.1152/ajpendo.00234.2002. 
  44. ^ José L, Areta (2013年3月5日). Timing and distribution of protein ingestion during prolonged recovery from resistance exercise alters myofibrillar protein synthesis. doi:10.1113/jphysiol.2012.244897. https://physoc.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1113/jphysiol.2012.244897. 
  45. ^ プロテインが苦手と思う人に試してほしいプロテイン活用レシピ森永製菓のプロテインのポータルサイト
  46. ^ プロテインパウダー のレシピcookpad
  47. ^ プロテインは「食事の代わり」となりえるのか?GronG
  48. ^ アスリートの栄養摂取と食生活 41ページ日本スポーツ協会
  49. ^ 「プロテインを飲んではいけない」健康のために運動する人に多い根本的勘違いプレジデント・オンライン
  50. ^ プロテインで肝臓や腎臓に負担も…正しい摂取方法とは?ダイヤモンド・オンライン
  51. ^ タンパク質の摂りすぎは危険!?過剰摂取による影響とはglico
  52. ^ プロテイン、こんな飲み方は逆効果!8つの豆知識【専門家が回答】MELOS

関連項目[編集]