ブリガンティン

アービング・ジョンソン英語版
ブリガンティンの概念図

ブリガンティン: brigantine)は、2本のマスト横帆を持つ帆船ブリッグとよく似ており同一視される場合もあるが、一般的にはメインセイルが横帆か縦帆かでブリッグとブリガンティンを区別する。

概要[編集]

「ブリガンティン」の名前は13世紀頃の地中海海賊が好んだ小さな船が由来であり、イタリア語で「盗賊の船」を意味する『brigantino』が語源となっている。当時の「ブリガンティン」は2本のマストにラテンセイルを備え、8本から12本のオールが使用されていた。17世紀後半にイギリス海軍が用いた「ブリガンティン」と呼ばれる船は、帆とオールを持つ小さな船であることは共通していたが、2本マストにはともに横帆を備えていた。18世紀前半にはフォアセイルに横帆、メインセイルに縦帆を持つ現代の形状が完成した。

なお、「ブリガンティン」の定義としては「ブリッグ」と共通する部分があり、1780年に出版されたウィリアム・ファルコナー英語版の「海事辞典(Universal Dictionary of the Marine)」では、ブリッグとブリガンティンを以下のように定義している。

BRIG, or BRIGANTINE 2本マストの商船。この言葉は一般的に特別な構造の船を定義するものではなく、他の帆船とは異なる方法でマストや帆を備えた船のことを指している。ヨーロッパの様々な国の海事関係者によって、それぞれ特有の船を表す言葉として使われている。

(中略)

イギリスの水夫の間では、主帆がほぼ竜骨の面にそって張られた船を区別して用いられている。一方、大型の船の主帆は船を横切って、すなはち艇長方向に直角に張られ、甲板に平行に掛けられた帆桁に固定されている。ブリッグの場合、主帆の端は主檣を取り巻き、帆の上げ下げに応じて上下する「たが」(hoops)に取り付けられている。これは斜桁(縦帆をつり下げる、マストから斜め上に突き出た円材)によって上に伸ばされ、ブーム(帆の下部を張るために、横に渡された棒)で下に降ろされる。

一方でオックスフォード英語辞典(1720年版から1854年版)では、ブリッグとブリガンティンを同一視ししながらも別の意味として、以下のように定義している。

1. a. 船

(a) 元々ブリガンティンとは同義語(ブリッグは口語の短縮形)。ブリガンティンという言葉はそのまま残り、短縮されたブリッグは帆の形状が変わり、次の(b)のようになった。

(b) 前檣と主檣があり、主檣に斜桁とブームを備え縦帆を張った船のような2本マストに横帆を備えた船。

ブリッグはトライスル(小さな縦帆)用マストがないことと帆を巻き上げるために斜桁を降ろすことでスノーとは異なる。商業用スノーはしばしばブリッグと呼ばれることがある。ブリッグはブリガンティンから派生してより強い帆走力を得るために戦闘用ブリッグとなった。これも海賊に使われることが多かった。

ハーマフロダイトブリッグ[編集]

ブリッグと同様に2本のマストを持ち、フォアマスト横帆を、メインマストスクーナータイプの縦帆を持つ。基本的にブリガンティン型の帆装の類型だが、ブリッグ型とスクーナー型の帆装の特徴を混合して有するとされることから、雌雄同体(ハーマフロダイト、hermaphroditeと例えられ、また2種の中間的な意味からブリッグスクーナーbrig-schooner)とも呼ばれる。

メインマストコースセイルが縦帆であればトップセイルより上の帆の種類は問わないブリガンティンに対して、ハーマフロダイトブリッグのメインマストは基本的に全てが縦帆である点で区別は可能である。アメリカにおいては単にブリガンティンと言った場合、ハーマフロダイトブリッグのことを指す。現存するハーマフロダイトブリッグは少なく、イギリスが保有するEye of the Windが挙げられる。

関連項目[編集]