ブラザーズ・イン・アームス

ブラザーズ・イン・アームス
ダイアー・ストレイツスタジオ・アルバム
リリース
録音 西インド諸島 モントセラト Air Studios[1]
ジャンル ロック
時間
レーベル ヴァーティゴ
ワーナー・ブラザース・レコードアメリカ合衆国の旗
プロデュース マーク・ノップラー、ニール・ドーフスマン
専門評論家によるレビュー
チャート最高順位
  • 1位(アメリカ[2]、イギリス[3]、オーストリア[4]、オランダ[5]、カナダ・RPM[6]、スイス[7]、スウェーデン[8]、ドイツ[9]、ニュージーランド[10]、ノルウェー[11]
  • 46位(日本[12]
  • ダイアー・ストレイツ アルバム 年表
    アルケミィ〜ダイアー・ストレイツ・ライヴ
    (1984年)
    ブラザーズ・イン・アームス
    (1985年)
    マネー・フォー・ナッシング
    (1988年)
    『ブラザーズ・イン・アームス』収録のシングル
    1. 「君にさよなら」
      リリース: 1985年4月
    2. マネー・フォー・ナッシング
      リリース: 1985年6月
    3. 「ブラザーズ・イン・アームス」
      リリース: 1985年10月
    4. 「ウォーク・オブ・ライフ」
      リリース: 1985年12月
    5. 「愛のトリック」
      リリース: 1986年4月
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    ブラザーズ・イン・アームス』(Brothers in Arms)は、イギリスロックバンドダイアー・ストレイツ1985年に発表した、5作目のスタジオ・アルバム。ライヴ・アルバム『アルケミィ〜ダイアー・ストレイツ・ライヴ』(1984年)を挟んで発表された、3年振りのスタジオ・アルバムである。ダイアー・ストレイツにとって最大のヒット作であり、全世界での売り上げは3千万枚を超えている[13]

    背景[編集]

    このアルバムに収められている最後の曲「ブラザース・イン・アームス」は、1982年3月に勃発し、1992年2月に正式に収束した、イギリスとアルゼンチン間で戦われたフォークランド紛争が背景になっている。レコーディングはモントセラトAir Studiosで行われ、ニューヨークパワー・ステーションミキシングが行われた[1]。ダイアー・ストレイツの中心人物であるマーク・ノップラーと、ニール・ドーフスマンが共同でプロデュースしており、ドーフスマンはエンジニアも兼任した[1]。本作ではガイ・フレッチャーが新メンバーとして迎えられており[14]、また、「マネー・フォー・ナッシング」にはスティングがゲスト参加した。

    アルバムのクレジットでは、ウェザー・リポート等で活動していたオマー・ハキムと、当時ダイアー・ストレイツの正式メンバーであったテリー・ウィリアムズの2名がドラマーとして記載されている。ただし、『Sound on Sound』誌の2006年5月号に掲載された記事「CLASSIC TRACKS: Dire Straits 'Money for Nothing'」によれば、共同プロデューサーのドーフスマンは「彼(ウィリアムズ)は偉大なドラマーだが、彼のスタイルはストレート・アヘッドなロックン・ロールで、オマーのよりポリリズム的なスタイルの方がマーク(・ノップラー)の進めていた方向性に合っていた」「多くの異なるスタイルに精通したドラマーが必要だった」と語っており、「マネー・フォー・ナッシング」のイントロのスネアドラムトムトムはウィリアムズの演奏だが、殆どのパートはハキムの演奏が採用された[15]。モントセラトに呼ばれたハキムは、わずか2日半ほどで全曲のドラム・パートを録り終えている[15]。なお、ハキムの起用が決定する前、ノップラーはアンディ・ニューマークピーター・アースキンといったドラマーを候補に挙げていたという[15]

    収録曲「ウォーク・オブ・ライフ」は、ドーフスマンの意見によりアルバムから外すことも検討されたが、バンド側の意見が通って本作に収録された[16]。最終的には、「ウォーク・オブ・ライフ」は本作からの第4弾シングルとしてもリリースされている。

    今作のレコーディングはプロデューサーである(エンジニアも兼任)ニール・ドーフスマンの得意技とも言える「フル・デジタル・レコーディング」で行われている(当時は「コストがかかりすぎる」と言う事で敬遠されがちだった)。スタジオでの実作業としてはデジタルマルチトラックレコーダーで録音後、アナログコンソールを使用してミックスしたものをA/Dコンバーターを通して2チャンネルのデジタルレコーダーにトラックダウンし、最終的にデジタルマスタリングしている。同じドーフスマンプロデュースであるスティングの『ナッシング・ライク・ザ・サン』(1987年、全英1位)も、フル・デジタル・レコーディングである。このアルバム収録の「マネー・フォー・ナッシング」もマーク・ノップラースティングの共作曲であり、ボーカルで参加している。

    本作はLP、カセット、CDの形態でリリースされたが、カセットおよびCDは、大半の曲がLPより1分以上長いヴァージョンとなっている[17]。また、LPの売上げをCDが上回った史上初の作品ともなった。

    反響[編集]

    イギリスでは、バンドにとって2作目の全英アルバムチャート1位獲得作品となり[3]、通算14週にわたり1位を獲得して、1985年5月25日から1988年12月10日まで連続トップ100入りするロング・ヒットとなった[18]。その後も度々チャート・インを繰り返し、1996年6月15日付の全英アルバムチャートでは19位に再浮上して、8年振りに全英トップ20入りしている[18]。オフィシャル・チャート・カンパニーが2012年2月28日に発表したデータによれば、イギリス国内では累計415万2千枚を売り上げており[19]、2012年5月の時点では、イギリスで歴代7番目に売れたアルバムとなっている[20]

    アメリカのBillboard 200では、デビュー・アルバム『悲しきサルタン』以来となるトップ10入りを果たし、バンドにとって初の全米1位獲得アルバムとなった[2]。アメリカでは1985年7月にゴールド・ディスクに認定され、発売から1年後の1986年5月の時点で5×プラチナに認定されて、1996年には9×プラチナに認定されるほどの大ヒットを記録した[21]

    本作は、他にも多くの国で大ヒットを記録した。オランダのアルバム・チャートでは2週連続1位を獲得し、1993年2月27日までに合計250週トップ100入りしている[5]。スウェーデンのアルバム・チャートでは19週連続でトップ3にランク・インし、うち11週で1位を獲得[8]。ニュージーランドのアルバム・チャートでは、1985年5月26日から1986年7月13日まで1年以上にわたり連続でトップ10入りしており、うち21週で1位を獲得[10]

    本作に伴うコンサート・ツアーは12カ月続き、234公演が行われて約250万人を動員した[22]

    評価・受賞[編集]

    イギリスのブリット・アワードでは、1986年に本作が最優秀ブリティッシュ・アルバム賞にノミネートされるが受賞は果たせず、この年にはフィル・コリンズのアルバム『フィル・コリンズIII』が同部門を受賞した[23]。ただし、ダイアー・ストレイツはこの年の最優秀ブリティッシュ・グループ賞を受賞している[23]。そして、本作は1987年にも再び最優秀ブリティッシュ・アルバム賞にノミネートされ、この年には受賞を果たした[24]

    アメリカのグラミー賞では、本作収録曲「マネー・フォー・ナッシング」が最優秀ロック・パフォーマンス賞を受賞し、本作の共同プロデューサー/レコーディング・エンジニアであるニール・ドーフスマンが最優秀エンジニア賞を受賞した[25]。また、本作からのシングルのミュージック・ビデオを収録した映像作品『Brothers in Arms : The Video Singles』は、グラミー賞最優秀短編ミュージック・ビデオ賞を受賞した[26]

    ローリング・ストーン』誌が選定したオールタイム・グレイテスト・アルバム500では352位にランク・インした[27]

    2005年5月、本作のリリース20周年を記念して5.1サラウンド・サウンドのSA-CDが発売され[28]、このSA-CD盤は、第48回グラミー賞において最優秀サラウンド・サウンド・アルバム賞を受賞した[25]

    収録曲[編集]

    特記なき楽曲はマーク・ノップラー作。ランニング・タイムはCDに準拠。

    1. 君にさよなら "So Far Away" – 5:12
    2. マネー・フォー・ナッシング "Money for Nothing" (Mark Knopfler, Sting) – 8:26
    3. ウォーク・オブ・ライフ "Walk of Life" – 4:12
    4. 愛のトリック "Your Latest Trick" – 6:33
    5. ホワイ・ウォリィ "Why Worry" – 8:31
    6. アクロス・ザ・リヴァー "Ride Across the River" – 6:58
    7. ザ・マンズ・トゥー・ストロング "The Man's Too Strong" – 4:40
    8. 真実の世界 "One World" – 3:41
    9. ブラザーズ・イン・アームス "Brothers in Arms" – 7:00

    参加ミュージシャン[編集]

    アディショナル・ミュージシャン

    脚注・出典[編集]

    1. ^ a b c CD英文ブックレット内クレジット
    2. ^ a b Dire Straits - Awards”. AllMusic. 2015年6月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年8月30日閲覧。
    3. ^ a b ChartArchive - Dire Straits
    4. ^ Dire Straits - Brothers In Arms - austriancharts.at
    5. ^ a b dutchcharts.nl - Dire Straits - Brothers In Arms
    6. ^ RPM - Library and Archives Canada - 1985年9月14日付のRPMアルバム・チャートを掲載
    7. ^ Dire Straits - Brothers In Arms - hitparade.ch
    8. ^ a b swedishcharts.com - Dire Straits - Brothers In Arms
    9. ^ Charts.de - 2014年6月22日閲覧
    10. ^ a b charts.org.nz - Dire Straits - Brothers In Arms
    11. ^ norwegiancharts.com - Dire Straits - Brothers In Arms
    12. ^ 『オリコンチャート・ブックLP編(昭和45年‐平成1年)』(オリジナルコンフィデンス/1990年/ISBN 4-87131-025-6)p.190
    13. ^ BBC NEWS | Entertainment | Mark Knopfler hurt in crash
    14. ^ Dire Straits - Music Biography, Credits and Discography
    15. ^ a b c CLASSIC TRACKS: Dire Straits 'Money for Nothing' - soundonsound.com - by Richard Buskin - 2012年6月19日閲覧
    16. ^ 日本盤再発CD(UICY-6604)ライナーノーツ(Robert Sandall)
    17. ^ Dire Straits - Brother In Arms at Discogs
    18. ^ a b ChartArchive - Dire Straits - Brothers In Arms”. ChartArchive. 2012年9月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年4月27日閲覧。
    19. ^ Adele overtakes Michael Jackson in all-time biggest selling albums chart - officialcharts.com - 2012年6月19日閲覧
    20. ^ Adele 21's outsells Michael Jackson's Thriller and Bad - officialcharts.com - 2012年6月19日閲覧
    21. ^ RIAA公式サイト内SEARCHABLE DATABASE - 引用符付きの"BROTHERS IN ARMS"と入力して検索すれば表示される
    22. ^ Welcome to MKNews - The official Mark Knopfler News website
    23. ^ a b The BRITs 1986
    24. ^ The BRITs 1987
    25. ^ a b Brothers in Arms - Dire Straits : Awards : AllMusic
    26. ^ Brothers in Arms: The Video Singles - Dire Straits : Awards : AllMusic
    27. ^ Dire Straits, 'Brothers in Arms' - 500 Greatest Albums of All Time | Rolling Stone - 2015年11月8日閲覧
    28. ^ ダイアー・ストレイツ『ブラザーズ・イン・アームス』SA-CD盤化! - CDJournal.comニュース