ハート (バンド)

ハート
USA.ニューヨーク公演(2012年)
基本情報
別名
  • ジ・アーミー
  • ホーカス・ポーカス
  • ホワイト・ハート
出身地 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国 ワシントン州シアトル
ジャンル
活動期間
レーベル
公式サイト Heart Official Website
メンバー
旧メンバー 別記参照

ハート (Heart)は、アメリカ合衆国出身のロックバンドである。アンナンシーのウィルソン姉妹率いるユニットとして活動、女性ロック・ミュージシャンを核とした先駆的グループとしても知られる。2013年ロックの殿堂』入り。ジェイク・ブラウンの著書『Heart: In the Studio』の中で、「当時、彼女らのバンドは音楽における女性のための革命であり、ジャンルの壁を越え、批評家の称賛を集めることを始めていた。[4]」と説明されている。

来歴[編集]

アン&ナンシー・ウィルソン(1998年)
アン・ウィルソン (2022年)
ナンシー・ウィルソン (2010年)
ナンシー&ロジャー・フィッシャー(右) 1978年
  • 1966年に、ギタリストのロジャー・フィッシャーとベーシストのスティーヴ・フォッセンらが結成した「アーミー」というバンドが母体。1968年にメンバーチェンジを行い「ホワイト・ハート」と改名。
  • 1971年にフィッシャー、フォッセンがオーディションを行いアン・ウィルソンを見出す。アンは2、3週間のつもりでゲスト参加したが、ツアーが上手くいったためそのまま加入、「ホーカス・ポーカス」に改名。ここでアンはロジャーの兄マイク(ホーカス・ポーカスのメンバーでもあった)と出会う。
  • 1972年に「ハート」と改名し、マイクはバンドのマネージャーとなった。1973年から正式に発足。以降ナンシーは時々ライヴに参加、アン達にバンドに誘われていたが、小説家を志していたため決心がつかずにいた。
  • 1975年にナンシーも正式に加入し、ウィルソン姉妹、フィッシャー、フォッセンの4人組で1976年にデビューアルバム『Dreamboat Annie』を発表。レッド・ツェッペリンに強く影響された音楽性やアンの歌声、姉妹バンドであることなどが注目を集め、「Magic Man」(全米9位)「Crazy on You」(全米35位)などの曲がヒットした。この時期アンとマイク、ナンシーとロジャーは恋愛関係にあった。
  • 1977年には1stにも参加していたギタリスト/キーボーディストのハワード・リース、ドラマーのマイケル・デロージャーを加えた編成で2ndアルバム『Little Queen』を発表。シングル「バラクーダ (Barracuda)」は全米11位を記録した。
  • 1979年にアンとマイク、ナンシーとロジャーの2組のカップルが破局。フィッシャーが脱退。この時点で完全にウィルソン姉妹が中心のバンドとなる。
  • 1982年にはフォッセンとデロージャーが脱退し、ベースにマーク・アンデス、ドラムにはデニー・カーマッシが加入。この頃には商業的に低迷期に入っていた。
  • 1985年発表の8thアルバム『Heart』では、当時、「サバイバー」や「キッス」等を手がけヒット作を連発していたロン・ネヴィソンをプロデューサーに迎えた。初めて外部のソングライターによるポップでキャッチーな曲を収録し、これが起死回生のヒット作となる。「What About Love?」(全米10位)、「Never」(全米4位)「These Dreams」(全米1位)「Nothin' At All」(全米10位)とシングルヒットを連発、アルバムも全米1位となり、一気にスターダムへと駆け上がった。
  • こうして1987年発表の9thアルバム『Bad Animals』(プロデュース/ロン・ネヴィソン)も全米2位、1990年発表の10thアルバム『Brigade』も全米3位と、バンドは黄金期を迎えた。この時期にはヘヴィメタルのムーヴメントが盛り上がっており、それに乗る形でルックスや音造りもグラマラスでゴージャスなものへと変化していた。姉妹はバンド活動休止時の1990年代後半のインタビューで「ロンのプロデュースは徹底的に売れる音作りを狙っていたので、納得できない点もあった。」と答えている。しかし、この徹底的に売れる音作りが見事に当たったのは事実であった。
  • 1993年11thアルバム『Desire Walks On』を発表するが、この頃盛り上っていたグランジブームに押されバンドの人気は急激に低下。ここにベースのマークは参加せず、1992~1993年に脱退したものと思われる。
  • この頃からアンとナンシーは「ラヴモンガーズ」を始めとしたバンド外のプロジェクト活動やソロ活動を重視し、サウンドも原点回帰のアコースティック路線を模索するようになる。
  • この間にデニーは、デイビッド・カバーディル(Vo/ex:ホワイトスネイク)とジミー・ペイジ(g/ex:レッド・ツェッペリン)のプロジェクトであるカバーディル/ペイジに参加。引き続きカバーディルが再始動させたホワイトスネイクにも参加する。こうして1994年頃には脱退。
  • 1995年MTVの看板番組「アンプラグド」に出演。StringsでAcousticなナンバーを披露している。この模様はのちにライブ作品『The Road Home』に収録。このライブには元レッド・ツェッペリンのジョン・ポール・ジョーンズをベースに迎えており、姉妹のツェッペリン好きの夢がかなったといったところだろうか。[要出典](ちなみにジョンはこのアルバムのプロデュースも行っている)
  • 1999年ナンシー・ウイルソンはソロとして「LIVE AT MCCABE'S GUITAR SHOP」をリリース。
  • 2000年-2001年ナンシーは、当時の夫で映画監督のキャメロン・クロウの『あの頃ペニー・レインと』(2000年)、『バニラ・スカイ』(2001年)のサントラに曲を提供。
  • 2002年HEARTとしてバンドメンバーも変え、久しぶりサマー・オブ・ツアーが行われる。最終日には地元シアトルでライブを行いライブ作品『Alive in Seattle』として発売されている。このツアーにはデビュー当時からバンドを支えていたハワードの姿は見られなかった。
  • 2004年、11年ぶりのオリジナルとなる12thアルバム『Jupiter's Darling』を発表[5]。このレコーディングにもハワードは参加せず脱退が決定的になる。こうしてバンドは実質的に姉妹のプロジェクトとなる。ハワードは2008年頃よりバッド・カンパニーのサポートメンバーとしてツアーに同行していて、2010年には来日もした。

  90年代以降、長期のツアーは避け、単発的なライブ活動を中心に据えるようになってきている。
  また最近は、乳がんやアフリカのエイズ貧困問題など支援活動行っている。

2008年のチャリティーライブにて
  • 2007年アン・ウィルソンが初のソロ・アルバム"Hope & Glory"を9月にリリース。カヴァーアルバムで、ゲストも多彩でエルトン・ジョンk.d.ラングらが参加。「ハート」としては、現在のメンバーにStringsを加えた編成で1stアルバム『Dreamboat Annie』を再現したライブ演奏したライブ作品『Dreamboat Annie Live』を発表。
  • 2010年、13thアルバム『Red Velvet Car』を発表。ナンシーとキャメロン・クロウの離婚が成立。
  • 2012年ナンシーが大手映画会社の幹部と再婚。14thアルバム『Fanatic』を発表[6]
  • 2013年、『ロックの殿堂』入り[7]
  • 2015年、アンが一般男性と結婚[8]
  • 2016年、15thアルバム『Beautiful Broken』を発表[9]
  • 2023年10月10日にカリフォルニアで開催したアンのソロライブに、ナンシーがサプライズ出演し「Barracuda」を披露。12月27日にはカリフォルニア州ハイランドで、2019年10月以来となる『ハート』としてのワンマンライブを開催。参加メンバーは、アンとナンシーに加えて、ライアン・ワリナー(ギター)、ライアン・ウォーターズ(ギター)、ポール・モーク(ギター)、トニー・ルシード(ベース)、ショーン・レーン(ドラムス)。またその後も翌28日に同州パームデザート、31日に地元・ワシントン州シアトルでもワンマンライブを開催した[10][11][12]
  • 2024年1月、同年4月20日から北米とヨーロッパを廻るツアー『Royal Flush』を開催することを発表。北米での公演にはチープ・トリック、英国での公演にはスクイーズがサポート・アクトとして参加[12]

特徴[編集]

USA.サンディエゴ公演 (2010年12月)

音楽性[編集]

  • アンの「女ロバート・プラント」と称されるエネルギッシュな歌声と、ナンシーの激しくも可憐なギタープレイが魅力。
  • エルトン・ジョンの長年にわたる共作者であるバーニー・トーピンマーティン・ペイジとの共作)が作詞した「These Dreams」など、ナンシーが歌ってヒットした曲もある。
  • 総じて1970年代から1980年代前期にかけてはアコースティックな要素のあるハードロックであり、1980年代後期のヒット曲はメロディアスでコマーシャル、2002年以降は初期の音楽性に回帰しグランジの要素も加わっている。

逸話・その他[編集]

  • 『Magazine』リリースまでの紆余曲折

実際は、『Little Queen』よりも『Magazine』の曲の方が先に録音されていた。
レコード会社移籍(マッシュルーム→ポートレイト)に伴う裁判問題で、先に『Little Queen』がリリースされた。
その後契約上の問題のため、マッシュルーム側は上記の録音されていた曲にライブ・テイクを加え、『Magazine』としてリリースした。
しかしハート側は、これを未完成であるとして発売停止を裁判所に訴え、認められる。
これにより、マッシュルーム盤『Magazine』は発売中止・回収を義務付けられた。
結局ハート側はオーバー・ダビング等をし直し新たに『Magazine』をリリースした。

  • メンバーのうち、3人(フィッシャー、フォッセン、デロージャー)はカナダのロックバンドシェリフの元メンバーの2人とエリアスを結成し、1990年に「君がほしい」が大ヒットしたが、これ以降ヒットは続かなかった。

メンバー[編集]

現ラインナップ[編集]

  • アン・ウィルソン Ann Wilson - ボーカル (1972- )
  • ナンシー・ウィルソン Nancy Wilson - ギター (1973-1995, 2002- )
  • デニー・フォンハイザー Denny Fongheiser - ドラムス (1993-1995,2019- )
  • クレイグ・バートック Craig Bartock - ギター (2003-2016,2019- )
  • ライアン・ウォーターズ Ryan Waters - ギター (2019- )
  • アンディ・ストーラー Andy Stoller - キーボード (2019- )
  • ダン・ウォーカー Dan Walker - ベース (2019- )

旧メンバー[編集]

  • ロジャー・フィッシャー Roger Fisher - ギター (1967-1980)
  • スティーヴ・フォッセン Steve Fossen - ベース (1967-1982)
  • マイク・フィッシャー Mike Fisher - ギター (1973-1974)
  • ジェフ・ジョンソン Jeff Johnson - ドラムス (1973-1974)
  • デヴィッド・ベルザー David Belzer - キーボード (1973-1974)
  • ブライアン・ジョンストン Brian Johnstone - ドラムス (1974-1975)
  • ジョン・ハンナ John Hannah - キーボード (1974-1975)
  • ハワード・リース Howard Leese - ギター/キーボード (1975-1998)
  • マイケル・デロージャー Michael Derosier - ドラムス (1975-1982)
  • マーク・アンデス Mark Andes - ベース (1982-1993)
  • デニー・カーマッシ Denny Carmassi - ドラムス (1982-1993)
  • フェルナンド・サンダース Fernando Saunders - ベース (1993-1995)
  • スコット・オルソン Scott Olson - ギター (1995-2003)
  • フランク・コックス Frank Cox - ギター (1995, 1998)
  • ジョン・ベイレス Jon Bayless - ベース (1995, 1998)
  • スコット・アダムス Scott Adams - サクソフォーン (1995)
  • マイク・アイネス Mike Inez - ベース (2002-2006)
  • トム・ケロック Tom Kellock - キーボード (2002-2003)
  • ギルビー・クラーク Gilby Clarke - ギター (2003-2004)
  • ダリアン・サハナジャDarian Sahanaja - キーボード (2003-2004)
  • リック・マークマン Ric Marksman - ベース (2006-2009)
  • クリスチャン・アタード Kristian Attard - ベース (2009-2012)
  • デビー・シャイアー Debbie Shair - キーボード (2004-2014)
  • ダン・ロスチャイルド Dan Rothchild - ベース (2012- )
  • ベン・スミス Ben Smith - ドラムス (1995- )
  • クリス・ジョイナー Chris Joyner - キーボード (2014- )

関連ユニット[編集]

アーミー(The Army) 1966年[編集]

  • ロジャー・フィッシャー(Roger Fisher) - guitar
  • スティーヴ・フォッセン(Steve Fossen) - bass guitar
  • ドン・ウィルヘルム(Don Wilhelm) - vocal/guitar/organ
  • レイ・シーファー(Ray Schaefer) - drums

ホワイト・ハート(White Heart)→ハート(Heart) 1968年 - 1970年[編集]

メンバーチェンジを行いホワイト・ハートと改名。1970年のごく短期間短縮してハートと名乗っていた。

  • ロジャー・フィッシャー(Roger Fisher) - guitar
  • スティーヴ・フォッセン(Steve Fossen) - bass guitar
  • ゲイリー・ジーゲルマン(Gary Ziegelman) - vocal
  • ジェイムズ・チリロ(James Chirillo) - guitar
  • ロン・ルッジ(Ron Rudge) - drums
  • ケン・ハンセン(Ken Hansen) - percussion

ホーカス・ポーカス(Hocus Pocus) 1971年 - 1972年[編集]

  • ロジャー・フィッシャー(Roger Fisher) - guitar
  • スティーヴ・フォッセン(Steve Fossen) - bass guitar
  • アン・ウィルソン(Ann Wilson) - vocal
  • マイク・フィッシャー(Mike Fisher) - guitar
  • ジョン・ハンナ(John Hannah) - keyboard
  • ブライアン・ジョンストン(Brian Johnstone) - drums

ラヴモンガーズ(THE LOVEMONGERS) 1991年 - 1998年[編集]

『The Battle of Evermore』、『Whirlygig』、『A Lovemonger's Christmas』録音。

  • アン・ウィルソン(Ann Wilson) - vocal/bass guitar/acoustic guitar
  • ナンシー・ウィルソン(Nancy Wilson) - acoustic guitar/guitar/vocal/backing vocal/mandolin
  • スー・エニス(Sue Ennis) - keyboard/guitar/vocal
  • フランク・コックス(Frank Cox) - guitar/mandolin/vocal/keyboard

ディスコグラフィ[編集]

スタジオ・アルバム[編集]

  • 『ドリームボート・アニー』 - Dreamboat Annie(1976年) 全米7位、全英36位
  • 『リトル・クイーン』 - Little Queen(1977年) 全米9位、全英34位
  • 『マガジン』 - Magazine(1978年) 全米17位 (2曲ライヴ) ※元々は2作目
  • 『ドッグ&バタフライ』 - Dog And Butterfly(1978年) 全米17位
  • 『ベベ・ル・ストレンジ』 - Bebe Le Strange(1980年) 全米5位
  • 『プライベート・オーティション』 - Private Audition(1982年) 全米25位、全英77位
  • 『パッション・ワークス』 - Passionworks(1983年) 全米39位
  • 『ハート』 - Heart(1985年) 全米1位、全英19位
  • 『バッド・アニマルズ』 - Bad Animals(1987年) 全米2位、全英7位
  • 『ブリケイド』 - Brigade(1990年) 全米3位、全英3位
  • 『デザイアー・ウォーク・オン』 - Desire Walks On(1993年) 全米48位、全英32位
  • 『ジュピターズ・ダーリング』 - Jupiter's Darling(2004年) 全米94位
  • 『レッド・ヴェルヴェット・カー』 - Red Velvet Car(2010年) 全米10位
  • 『ファナティック』 - Fanatic(2012年) 全米24位
  • Beautiful Broken(2016年) 全米105位

ライブ・アルバム[編集]

コンピレーション・アルバム[編集]

  • GREATEST HITS/LIVE (1980年)※ベスト&ライブ集
  • The Greatest Hits(1998年)
  • 『ハート・グレイテスト・ヒッツ』 - Greatest Hits 1985-1995(2000年)
  • 『エッセンシャル・ハート』 - Essential(2002年)
  • The Collection(2005年)※ボックス・セット
  • Love Songs(2006年)
  • Strange Euphoria(2012年)※ボックス・セット

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ Weinstein, Deena (2015). Rock'n America: A Social and Cultural History. University of Toronto Press. p. 164. ISBN 978-1-442-60015-7 
  2. ^ a b c Ankeny, Jason. Heart Biography, Songs, & Albums - オールミュージック. 2021年6月8日閲覧。
  3. ^ All Hail Hair Metal Heart”. PopMatters. PopMatters Media, Inc. (2015年8月5日). 2021年6月8日閲覧。
  4. ^ Brown, Jake (2010-12-15) (英語). Heart: In the Studio. ECW Press. ISBN 9781554903252. https://books.google.com/books?id=0_bTEAZJW4QC&printsec=frontcover&dq=heart+in+the+studio&source=bl&ots=89SsB7jo9W&sig=ki9JFlhF-75Qb_NwF3xaV5agh7w&hl=en&sa=X&ei=e0ocUPDTKIPO0QXYhoGoCA&redir_esc=y#v=onepage&q=heart%20in%20the%20studio&f=false 
  5. ^ ハートが11年ぶりの新作制作、夏には全米、ヨーロッパ・ツアー - BARKS
  6. ^ “美魔女”姉妹バンド=ハート、2年ぶり通算14作目の新作を発表!レッド・ツェッペリンのDNAを引き継ぐ、ヘヴィーなハード・ロックに原点回帰! - Sony Music Entertainment
  7. ^ ハート、ロックの殿堂入りの際にオリジナルメンバーで再結成? - BARKS
  8. ^ ハートのアン・ウィルソン、結婚 - BARKS
  9. ^ ハート、新作でジェイムス・ヘットフィールドとデュエット - BARKS
  10. ^ ハート、アン・ウィルソンの公演に妹ナンシーがサプライズ出演”. BARKS (2023年10月13日). 2024年1月30日閲覧。
  11. ^ ハート、活動継続するかは来月の公演のレベル次第”. BARKS (2023年11月29日). 2024年1月30日閲覧。
  12. ^ a b ハート、新ツアーの開催を発表”. BARKS (2024年1月30日). 2024年1月30日閲覧。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]