テータ関数(テータかんすう、英: theta function)は、

で定義される関数のことである。それ以外にも、指標付きのテータ関数
、ヤコビのテータ関数、楕円テータ関数
と呼ばれる一連のテータ関数が存在する。 指標付きのテータ関数や楕円テータ関数は、その定義にいくつかの流儀があり、同じ記号を使いながら違ったものを指していることがあるので注意が必要である。 これらの関数は、z の関数と見た場合には擬二重周期を持ち楕円関数に関係し、τ の関数と見た場合はモジュラー形式に関係する。
テータ関数は次のように定義される関数のことを指す。

テータ関数を z の関数と見た場合、周期 1 の周期関数である。

一般には以下の等式を満たす。

ヤコビのテータ関数は狭義の意味では次の関数のことを指す。

ただし、
は補母数、
は 第1種完全楕円積分、
はヤコビのツェータ関数

はヤコビのイプシロン関数、
は第2種完全楕円積分、
,
は ヤコビの楕円関数、
は振幅関数である。
また、ヤコビのエータ関数

を含めて、
,
,
,
のことをヤコビのテータ関数と呼ぶこともある。ただし、
である。ヤコビのテータ関数は、後述の楕円テータ関数と以下の関係で結ばれている。

ただし、
は、楕円関数の基本周期の半分で、
である(
,
が楕円関数の基本周期に相当する)。
物理の教科書[7]では後述の
をヤコビのテータ関数と呼んでいるが、やや不正確な言い方である。
以下のように定義された、添え字を 2 つ持つテータ関数のことを指標付きのテータ関数と呼ぶ。

なお、指標付きのテータ関数の定義には 2 つの流儀があって統一的に用いられていないため、文献を読むときには注意しなければならない 。 この記事で使われているのは、Mumford 2006 で使われているのと同じ定義である。
楕円テータ関数(だえんテータかんすう、英: elliptic theta function)は、以下のように定義された関数である。 ただし、
,
である。

楕円テータ関数にも定義に 2 つの流儀があり、注意が必要である。 フルヴィッツ・クーランの「楕円関数論」の定義では添え字が 1 から 4 ではなく、 0 から 3 である。 その場合は
,
,
の定義は変わらず、
で定義される。 文脈から v あるいは τ が明らかな場合は
あるいは
と書き、更に
と書く。Mathematica では、
のことを v と書いている。
テータ関数は擬二重周期を持つ。








ヤコビの三重積の公式により、




であるから
の零点は

である。他の関数の零点も同様にして求められる。

v = 0 のときのテータ関数の値をテータ定数(英: theta constant)あるいはテータ零値(独: Thetanullwerte)という。これは定数といいながら実は τ の関数である。



であるから、代わりに導関数を用いる。
![{\displaystyle {\begin{aligned}\vartheta _{1}'&=\left[{\frac {d}{dv}}\vartheta _{1}(v;\tau )\right]_{v=0}\\&=2e^{{\pi }i{\tau }/4}\pi \cos(0)\prod _{m=1}^{\infty }{\left(1-e^{2m{\pi }i{\tau }}\right)^{3}}+2e^{{\pi }i{\tau }/4}\sin(0){\frac {d}{dv}}\prod _{m=1}^{\infty }{\left(1-e^{2m{\pi }i{\tau }}\right)\left(1-e^{2m{\pi }i{\tau }}e^{2{\pi }iv}\right)\left(1-e^{2m{\pi }i{\tau }}e^{-2{\pi }iv}\right)}\\&=2{\pi }e^{{\pi }i{\tau }/4}\prod _{m=1}^{\infty }{\left(1-e^{2m{\pi }i{\tau }}\right)^{3}}\\\end{aligned}}}](https://wikimedia.org/api/rest_v1/media/math/render/svg/9ee7f87bf80cc854c4b6c0309ef51e6196879022)
とすると

となるが、オイラーの分割恒等式により、

であるから c = 1 であり、故に
である。
テータ関数の間で次の恒等式が成立する。



擬二重周期と併せて








次の恒等式はヤコビの虚数変換式という。

他に τ を変換するものとして






これにより

次の恒等式はランデンの公式 (Landen's formula) という。


第一式の右辺を展開すれば

となるが、
が奇数の項は
で打ち消し合うから

となり、左辺を得る。第二式は第一式に
を代入して得られる。
例えば

であるが、
は共に偶数か共に奇数であるから、
とすれば

となる。ここで
とすれば

となり、
とすれば

となる。これらにより

が得られ、同様にして数十もの恒等式が得られる。