タイムパトロール (藤子・F・不二雄)
タイムパトロールは、藤子・F・不二雄の漫画作品『T・Pぼん』や『ドラえもん』、『SF短編』に登場する組織。
24世紀のメガロポリスに本部を持ち、各時代に調査隊を派遣している。また、時空間(タイムマシンの走行する空間)のパトロールもしている。
作品での設定の差異[編集]
航時法に基づいて活動を行う組織であることに変わりはないが、『T・Pぼん』では主に歴史に関わらない人物の救命活動が描かれるのに対し、『ドラえもん』と『SF短編』では航時法に反した犯罪(時間犯罪)の捜査・取り締まりが描かれる。
『T・Pぼん』では、過去の人物にタイムマシンやタイムパトロールの存在を知られる事が禁忌とされている(知られた場合は、「記憶を消す」「歴史を変えてその存在自体を抹消する(生まれてこなかったことにする)」「タイムパトロールの隊員にする」などの手段を取ろうとする)描写があるが、『ドラえもん』と『SF短編』ではそのような描写は無い。
また、同一作者による作品としては非常に珍しいことに、キャラクターそのものや、キャラクターが使用する道具[注 1] や乗り物等、特に漫画作品では重要視されるそのデザインに、全くといっても過言ではない程にまで共通性がみられない(アニメなどでは一部例外が存在する[注 2][注 3][注 4])。
『ドラえもん』における登場[編集]
本編における登場[編集]
- 『未来世界の怪人』(てんとう虫コミックス4巻)
- 現代へ逃げて来て、自分の正体を知ったのび太・ドラえもん・ジャイアンを殺そうとした宇宙ロケット強盗犯を間一髪で逮捕する。警察官同様の服装で、制帽の前章は「P」の文字。全員がサングラスを掛けており、素顔は分からない。熱線銃で武装している。
- 『石器時代のホテル』(てんとう虫コミックス38巻)
- 2万年前の世界でサーベルタイガーに襲われたドラえもんたちを助け、現代へと送り返す。
アニメ第2作第1期における登場[編集]
- 『タイムマシンでお正月』
- 1980年1月1日放送。『石器時代のホテル』のアニメ版。
- 『サンタバッグでクリスマス』
- 1998年12月18日放送。アニメオリジナルエピソード。
- 『謎の四次元カバン』
- 2002年3月30日放送。『未来世界の怪人』のアニメ版。
- 『ツアーロボット』
- 2003年10月4日放送。アニメオリジナルエピソード。
アニメ第2作第1期映画における登場[編集]
- 『ドラえもん のび太の恐竜』
- ドルマンスタインとそれに雇われた恐竜ハンター(時間犯罪者の一種)の陰謀を阻止するために、偵察用の小型カメラで基地の位置を捜索していた。ドラえもんとのび太をおびき寄せるために基地の入り口を晒したところを発見し、逮捕に向かう。
- 担当声優は、隊長が加藤正之(ミュージカル版では井上和彦)。隊員が井上和彦、宮村義人。
- 『ドラえもん のび太の日本誕生』
- ギガゾンビの陰謀を阻止するために、その時代へ乗り込む。この際、ギガゾンビに警戒されないため、隠密行動という形でタイムマシンごとマンモスに変装してアジトを探していた。ギガゾンビが設置した装置によって時空間が歪んでおり、仲間を呼びにくい状況であったが、隊員(声:橋本晃一)が遭難していたのび太を救助し、ギガゾンビのアジト発見の手助けをしてもらった。物語のラスト、その時代(7万年前及び現代)にいてはいけない動物(22世紀では、空想動物サファリパーク内などで確認することができるが、その当時では架空動物)であるグリ(グリフォン)・ドラコ(ドラゴン)・ペガ(ペガサス)をのび太から引き受ける。
- 担当声優は、橋本晃一。
- 『ドラえもん のび太の創世日記』
- 時間を自由に飛び回る昆虫人(別の地球の知的生命体であり、航時法を知らないため時間犯罪者とは呼べない存在)を不正タイムトラベラーとして追うが、時空間の支流(歴史の分かれ目)に逃げられてしまう(支流の存在はドラえもんの道具の「創世セット」で地球を製作した際に新しく生み出されたものであるため、タイムパトロールは知らなかった)。
- なお、本作では昆虫人を発見するため時空間で検問も行なっており、自分の夏休みの自由研究を先取りするために未来(新学期の初め)に向かったのび太を止め、時間旅行の目的・出発した時代・向かう時代・名前・住所・学校名などを矢継ぎ早に質問していた(ただし途中で昆虫人を発見したという通信が入り逮捕に向かったため、のび太は何一つ答えていない)。
- 担当声優は秋元羊介、掛川裕彦。
- 『ドラえもん のび太の南海大冒険』
- Mr.キャッシュとDr.クロンの手によって、17世紀に存在するアジトに来られないように細工をされてしまうが、のび太たちの活躍によってその時代に来ることができ、陰謀を阻止する。イルカの隊員が登場という珍しい作品でもある。
- 担当声優は、隊長は、中庸助。イルカの隊員・ルフィンを麻上洋子。
- 『ドラえもん のび太とふしぎ風使い』
- 第2作第1期でタイムパトロールが登場した最後の大長編。
- ドラえもんがストームを倒した後、ストームを逮捕する為に登場。
- 担当声優は、中庸助。
- 『2112年 ドラえもん誕生』
- 捕らえていた時間犯罪者(ドルマンスタイン)を逃してしまい、ドラえもんの協力で再逮捕する。そのお礼として特別製のミニドラ(ドラえもん同様に耳の無いミニドラ)をプレゼントする。また、ドラ・ザ・キッドのその早撃ちの腕を見込み、採用のボタンを押すシーンも見られる。
ドラ・ザ・キッド[編集]
- 『2112年 ドラえもん誕生』
- ザ・ドラえもんズの一人ドラ・ザ・キッドが、タイムパトロールの要請を受けている。
- このことから、西部の星などの22世紀ではなく西部開拓時代のアメリカ西部の保安官補佐などとして登場する場合、タイムパトロールも兼ねていると設定されることがある。
アニメ第2作第2期における登場[編集]
- 『のび太を愛した美少女』
- 2009年6月26日に放送された1時間スペシャル内の作品。『ターミネーター』のパロディ作品にもなっている。
- 担当声優は、高戸靖広。
- 『なんでも空港』
- 2014年8月1日に放送された1時間スペシャル内の作品。原作でも『オバケのQ太郎』『怪物くん』、第2作第1期でも『パーマン』『エスパー魔美』『ウメ星デンカ』のキャラクターが登場しているが、第2作第2期では第2作第1期で登場したキャラクターに加え『すすめロボケット』『チンプイ』などの他のキャラクター登場。その中で『T・Pぼん』の並平凡とリーム・ストリームも登場。
- 『のび太特急と謎のトレインハンター』
- 2015年9月4日に放送された1時間スペシャル内の作品。
- 担当声優は、大川透。
アニメ第2作第2期映画における登場[編集]
- 『ドラえもん のび太の恐竜2006』
- リメイク作品のため、リメイク前作品も参照。旧作と行動はほぼ同じ(ただし最終盤の展開が旧作と異なり、恐竜ハンターの逮捕後にドラえもんたちを送り届けていない)。
- 担当声優は、長官が劇団ひとり。隊員がスキマスイッチ(大橋卓弥と常田真太郎)。
- タイムスキッパー(タイムマリン)には漢字で「時警」と表記されており、船尾には「あらなみ」「いそなみ」といった船名も表記されている。
- 『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』
- リメイク作品のため、リメイク前作品も参照。
- ギガゾンビの陰謀を阻止するために、ドラミと共にその時代へ乗り込む。原作・旧作とは異なり、マンモスに変装しての調査はしておらず、本作の一件が時間犯罪事件であることに気付いたドラミの通報によって出動し、時空間から直接タイムマリンごとギガゾンビのアジトに乗り込んでいる。ドラえもん本編では初の女性隊長及び隊員が登場した[注 2]。
- 担当声優は、隊長が久川綾。隊員が福井美樹・慶長佑香。
- 『ドラえもん のび太と奇跡の島 〜アニマル アドベンチャー〜』
- 同作に登場する悪役、シャーマンとその部下達の引き渡し先として名前のみ登場。
- 『ドラえもん のび太の新恐竜』
- 猿に変装していたジルが、その時代へやってきたドラえもんたちの行動を監視。長官であるナタリーと連絡を取り合っていた。のび太が恐竜の大量絶滅を防ぐため、逆時計を使い隕石を宇宙へ返そうとした瞬間にタイムスキッパー(タイムマリン)で乗り込み、歴史の改変を阻止するために拘束する。しかしジルが所持していた「チェックカード」がのび太とキューに反応を示すと拘束を解き、以降のドラえもんたちの行動には干渉せず、見守る立場となる。全てが終わったとき、ドラえもんたちを元いた時代へ送り届けた。ドラえもん本編では初の女性長官が登場するほか、一時的とはいえドラえもんたちと対立し、「チェックカード」を使用した以降の行動が『T・Pぼん』と同様[注 5]であるなど、これまでにない形で物語に深く関わっている。
- 担当声優はナタリー長官が渡辺直美。ジルが木村拓哉。
- 『ドラえもん のび太と空の理想郷』
- 三賢人を逮捕するため22世紀の北極海に潜んでいたパラダピアの元へ艦隊で現れる。包囲作戦を展開するも通信を傍受していた三賢人がパラダピアを時空移動させたため、取り逃がしてしまう。パラダピアに潜入したマリンバと協力しており、最終的には彼女の通報を受けてレイ博士の逮捕に成功する。
TVゲームにおける登場[編集]
- 『ドラえもん3 のび太と時の宝玉』
- 今作でのタイムパトロールは未来の大臣であるダウトの圧力で身動きが取れず、それどころかその圧力に屈してドラえもんたちを逮捕しようとするなど、ほとんど敵といっても良い存在になっている。
時空犯罪者[編集]
タイムパトロールが追う犯罪者。なお、時空犯罪者が登場してもタイムパトロールが登場しない作品(『2009年版未来世界の怪人』や 『ギガゾンビの逆襲』)やタイムパトロールが登場しても時空犯罪者が登場しない作品(『のび太の創世日記』)も存在する。詳細は、それぞれのリンク先を参照。
- 未来世界の怪人
- 声 - 井上和彦(1979年)→小杉十郎太(2009年)
- 未来世界の異星人。原作やアニメ第1作第2期及び第2作第1期では、駆け付けたタイムパトロールによって逮捕されるが、第2作第2期では逮捕直前にジャイアンの母に成敗された。
- 登場作品
- 『未来世界の怪人』
- ドルマンスタン(ドルマンスタイン)
- 声 - 島宇志夫→大塚周夫(『ミュージカル版のび太の恐竜』『ドラえもん誕生』)→内海賢二(『のび太の恐竜2006』)
- 未来世界(24世紀)の大富豪。恐竜コレクター。
- 登場作品
- 『ドラえもん のび太の恐竜』
- 『2112年 ドラえもん誕生』
- 『ドラえもん のび太の恐竜2006』
- 黒い男(黒マスク)
- 声 - 加藤精三→広瀬正志(『ドラえもん誕生』)→船越英一郎(『のび太の恐竜2006』)
- 未来世界の密猟者。恐竜ハンター。ドルマンスタンに雇われており、狩った恐竜をドルマンスタンに提供して収入を得ている。
- 登場作品
- 『ドラえもん のび太の恐竜』
- 『2112年 ドラえもん誕生』
- 『ドラえもん のび太の恐竜2006』
- ギガゾンビ(山田博士)
- 声 - 永井一郎→大塚芳忠(『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』)
- 未来世界(23世紀)の時間犯罪者。7万年前の世界の支配を企む。
- 登場作品
- 『ドラえもん のび太の日本誕生』
- 『ドラえもん ギガゾンビの逆襲』
- 『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』
- Mr.キャッシュ
- 声 - 上條恒彦
- 未来世界の犯罪者。既存の生物を改造した生物兵器の売買を行う商人。
- 登場作品
- 『ドラえもん のび太の南海大冒険』
- Dr.クロン
- 声 - 富田耕生
- 未来世界の科学者。未来では優秀な科学者だったのだが、生物の改造など危険な思想があったため追放された。
- 登場作品
- 『ドラえもん のび太の南海大冒険』
- ニーモ
- ジョーカー団の大幹部。
- 登場作品
- 『ドラえもん3 のび太と時の宝玉』
- ダウト
- ジョーカー団のボス。表向きは未来の大臣。
- 登場作品
- 『ドラえもん3 のび太と時の宝玉』
- ストーム
- 声 - 屋良有作
- 未来世界(22世紀)の考古学者。22世紀にてマフーガが復活する予言が書かれたペンダントを発見し、それを見届けるためにこの時代に訪れた。だが肝心の予言は外れたため、自ら予言どおりの状況を作り上げ、さらにはマフーガに破壊されつくした後の世界の支配を企む。
- 登場作品
- 『ドラえもん のび太とふしぎ風使い』
- レイ博士
- 声 - 中尾隆聖
- 未来世界(22世紀)の科学者。人を操る光の研究をしたことで指名手配されるも、消息不明となっていた。パラダピアでは研究所の奥に潜んでおり、三賢人を通して会話をしていた。敗北後は自分の過去に由来する人間に対しての激しい憎悪をのび太たちにぶつけ、パラダピアの全機能を停止して逃亡。しかし逃亡の最中に現れたタイムパトロールの艦隊に取り囲まれ、逮捕された。
- 登場作品
- 『ドラえもん のび太と空の理想郷』
『SF短編』における登場[編集]
- 『マイホーム』
- 時間旅行が自由化されて10年経った世界で、石炭紀のタイム分譲地を売ろうとした悪質業者を逮捕する。
メカニック[編集]
タイムパトロールが運用するメカニックは、主に「タイムマリン(タイムスキッパー)」と呼ばれる潜水艦のようなタイムマシン。巡視艇である。タイムマリンは作品ごとの年代やシリーズによって違いがあるほか固有の名称がないため、ここでは「タイムマリン・A,B,C型」などに分けて記述する。
- A型タイムマリン
- 第一作目の「のび太の恐竜」から登場しているタイプ。形状はロケットのような艦首と目玉のようなライトに、丸みをおびた潜水艦のような司令塔とパトランプ、司令塔後部のデッキ、両側に伸びる主翼とエンジンが特徴。武装は司令塔直下の2連装レーザー砲塔と、司令塔後部のデッキに備え付けられたT.Pミサイル。電子装備はレーダーと時間通信装置にくわえ、艦首にはタイムソナーが内蔵されている。推進機関としては、主翼などにそなえつけられた原子力エンジンと、船体下部のVTOL機のような四つのタキオンエンジンがある。そのほか、海上航行用と思われるスクリューも2基ほどある。エンジンは原子炉と超四次元振動機が備えられている。船内への入り口は、司令塔に設けられた舷窓付きハッチと、側面ハッチがある。またカラーリングは青と白が船体に塗られ、司令塔には「T.P」のマーキングが施されている船もあった。のちのドラえもん系列の作品にも多く登場するタイプで、若干のデザインの違いもある。
- B型タイムマリン
- 「水田版ドラえもん」の「のび太の恐竜2006」から登場しているタイプ。A型と同じ形状をしているが、それまでのタイムマリンにあったレーザー砲やミサイルなどの武装、タキオンエンジンなどが廃されている。そのかわりに艦尾に巨大なノズルのエンジンが設置されたほか、レーザー砲があった位置にはかなり大きな舷窓が設けられている。艦首下部には引っ込み式のタラップや、着陸脚もある。マーキングは新規のものとして、司令塔に赤いラインが1本ないし3本付けられたいるほか「時警」の文字もある。それぞれ船名もあるようで、船尾には「あらなみ」「いそなみ」などの船名がマーキングされている。その後の「水田版ドラえもん」のTV版にたびたび登場している。
- C型タイムマリン
- 「新・のび太の日本誕生」に登場したタイプ。B型とほぼ同じ形状をしているが、それまでのものと比べ明らかに大型化している。B型と同じように、武装などはない。船体下部にはタキオンエンジンと同じ形状のVTOL機のような垂直エンジンが四つ取り付けられている。階段状のタラップも船体側面に取り付けられており、劇中ではこれを使って隊員が現場に展開していた。新たなマーキングとして、TPと書かれた黄色と赤のロゴがある。
- 大型タイムマリン
- 「ドラえもん のび太の南海大冒険」に登場したタイプ。A型とほぼ同じ形状をしているが、大きさが異なり巨大化している。武装はレーザー砲が大型化されているが、T.Pミサイルは排除されている。その代わり、後部デッキは大幅に拡大されており、劇中ではA型タイムマリン1隻がヘリポートのように利用して着艦していた(推定でも3ないし4隻は搭載できるほどの大きさ)。推進機関は船尾にある三つの巨大なエンジン口と、六つのタキオンエンジン、主翼の原子力エンジンが確認できる。そのほか、司令塔後部には展望室らしき窓も確認できる。上記のような描写から、タイムパトロールの母艦ないし旗艦として機能しているようである。
- タイムボール
- 「のび太の恐竜」および「のび太の恐竜2006」に登場する偵察ボール。形状は丸い胴体とアンテナ、そして特徴的な眼球状のカメラを有している。タイムパトロールの偵察ドローンともいうべきメカである。
脚注[編集]
注釈[編集]
- ^ 『T・Pぼん』で登場する道具は、「タイムシーバー」「生物コントローラー」「ねむくならない薬」など、どちらかといえば、タイムパトロールが使用するものよりも、ドラえもんの持つひみつ道具に近いものが多い。
- ^ a b 『ドラえもん 新・のび太の日本誕生』に登場するタイムパトロール隊長・隊員および、隊員が身に着けるバッジやブレスレットは『T・Pぼん』のキャラクター(リーム・ストリーム、並平凡、安川ユミ子。字幕放送でそれぞれ凡・ユミ子・リーム隊長と記載。ゲーム版でもリーム隊長と表記あり)と装備をモデルにしたデザインである。
- ^ 『ドラえもん のび太の新恐竜』に登場するタイムパトール隊員のジルが、『T・Pぼん』で登場する「チェックカード」を使用している。
- ^ SF短編『マイホーム』では、タイムパトロールが使用するタイムマリンは『ドラえもん』と同様だが、制服のみ『ドラえもん』とも『T・Pぼん』とも違ったデザインとなっている。
- ^ カードに反応した相手には極力干渉してはならないとされている。