セイヨウネズ

セイヨウネズ
セイヨウネズ
保全状況評価[1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
分類
: 植物界 Plantae
: 球果植物門 Pinophyta
: マツ綱 Pinopsida
: マツ目 Pinales
: ヒノキ科 Cupressaceae
: ビャクシン属 Juniperus
: セイヨウネズ J. communis
学名
Juniperus communis L.[1]
和名
セイヨウネズ
英名
Common juniper[1]
Dwarf juniper[1]
Juniper[1]
Malchangel[1]
Mountain juniper[1]
Prostrate juniper[1]

セイヨウネズ(西洋杜松、Juniperus communis)は、ヒノキ科ビャクシン属の針葉樹である。全ての樹木の中で最も広い分布域を持つものの1つであり北半球の寒い地域全域に分布する。北極から北緯30度程度までの北アメリカヨーロッパアジアに自生する。

特徴[編集]

セイヨウネズは低木だが、時には10mにも達するものもある。葉は常緑の針状で、螺旋状についている。雌雄異株で、雄花と雌花は別の木に咲き、風を利用して受粉する。球果は木質とならず、やや肉質の漿果状となり、最初は緑色であるが18か月ほどで熟し、青色のワックス質に覆われた紫から黒色になる。直径4 - 12mmの球形で、1つあたり通常3つ(時には6つ)の種子を持つ。鳥に食べられ、糞と一緒に落とされることで種子が遠くまで運ばれる。雄球花は2 - 3mmの大きさで黄色く、3月から4月頃に花粉を飛ばす。球果(杜松果)は英語でジュニパーベリー(Juniper berry)と呼ばれ、ジンの香りの元として有名である。

分布域が広いことから、種内でも非常に遺伝的な多様性が高く、いくつかの亜種がある。亜種間の関連はまだはっきりしておらず、遺伝的なデータと外見は必ずしも一致していない。

亜種、変種[編集]

セイヨウネズの亜種、変種には下記のものがある。

  • Juniperus communis セイヨウネズ
    • subsp. communis セイヨウネズ - 通常、真直ぐに立った低木で、葉の長さは8-20mmで松かさは5-8mmと葉よりも小さい。比較的低緯度から中緯度にかけて分布する。
    • subsp. alpina (Suter) Čelak. リシリビャクシン - 通常、地を這う様な藪で、葉の長さは3 - 8mm。亜北極やアルプス山脈の高緯度地帯で良く見られる。亜種以下のレベルにおく植物学者もおり、その場合は Juniperus communis var. saxatilis Pallas や Juniperus communis var. montana とされる。またかつて東ヨーロッパやロシアでは、別種 J. sibirica Burgsd とされていた。

利用[編集]

この木はよく園芸用に使われるが、小さいため他の木材のように使うことはできない。しかしスカンジナビア半島では、バターチーズなどの日用品を入れる入れ物や、木製のバターナイフとして加工される。

収斂作用を持つ紫色の熟した球果は生で食べると苦いが、乾燥させて肉、ソースファルス、ジンなどの香り付けに使われる。実際にジンという言葉はネズの類を表すフランス語: genévrier(ジュネヴリエ)もしくはセイヨウネズを表すgenièvre(ジュニエーヴル)に由来する。

また味もとても強いため、ジビエなど、癖の強いものの調理に少量だけ使われる。フィンランドの伝統的なビールサハティ」(Sahti)を作るためにも必須である。さらに、ローマ帝国ペダニウス・ディオスコリデスによる『デ・マテリア・メディカ』(『薬物誌』、『ギリシア本草』)には、避妊用に使われたと記述される。

画像[編集]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h Farjon, A. 2013. Juniperus communis. The IUCN Red List of Threatened Species 2013: e.T42229A2963096. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2013-1.RLTS.T42229A2963096.en. Downloaded on 01 January 2021.
  2. ^ 米倉浩司・梶田忠(2003-) 「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)

関連項目[編集]