スティンガー (競走馬)

競走馬におけるスティンガーとは、

  1. 日本の、1987年生まれの競走馬。父シーハリアースタン、母父キタノカチドキ。中央で4戦未勝利[1]
  2. 日本の、1996年生まれの競走馬及び繁殖牝馬。本項にて記述。

スティンガー
スティンガー(2001年安田記念)
欧字表記 Stinger
香港表記 痛快駒
品種 サラブレッド
性別
毛色 鹿毛
生誕 1996年5月15日
死没 2023年9月21日(27歳没)
登録日 1998年10月1日
抹消日 2002年3月27日
サンデーサイレンス
レガシーオブストレングス
母の父 Affirmed
生国 日本の旗 日本北海道千歳市
生産者 社台ファーム
馬主 吉田照哉
調教師 藤沢和雄美浦
競走成績
タイトル JRA賞最優秀3歳牝馬(1998年)
生涯成績 21戦7勝
獲得賞金 4億250万6000円
IC 113I(1999年)[2]
112M(2000年)[3]
110M(2001年)[4]
勝ち鞍
GI 阪神3歳牝馬S 1998年
GII サンスポ賞4歳牝馬特別 1999年
GII 京王杯SC 2000年 - 2001年
GIII 京都牝馬特別 2000年
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スティンガー1996年5月15日 - 2023年9月21日)は日本競走馬繁殖牝馬である。中央競馬阪神3歳牝馬ステークスサンスポ賞4歳牝馬特別に優勝し、また京王杯スプリングカップを連覇するなど活躍した。

本馬が現役中の2001年から日本では馬齢表記が変更になっているが、記事中は競走の名称をのぞき現表記で統一する。

戦績[編集]

2歳時[編集]

1998年11月8日東京競馬場での新馬戦を快勝すると、続く赤松賞も勝ち連勝。ここで藤沢和雄はこの馬の能力を試すため阪神3歳牝馬ステークス(現阪神ジュベナイルフィリーズ)に連闘で出走させた。3番人気であったが、結果はエイシンレマーズ以下に2馬身の差を付け快勝した。これは12月6日の出来事で、デビューから僅か1ヶ月足らずのGI制覇であった[注釈 1]。この勝利で1998年JRA賞最優秀3歳牝馬(旧称。現在のJRA賞最優秀2歳牝馬)に選ばれたスティンガーは翌年に向け休養に入った。

3歳時[編集]

1999年牝馬三冠の第一戦・桜花賞トライアルを使わず直行するという異例のローテーションを選択。桜花賞では4歳牝馬特別(現:フィリーズレビュー)を勝ったフサイチエアデールチューリップ賞に優勝したエイシンルーデンス、阪神3歳牝馬ステークス3着でエルフィンステークスに勝ったゴッドインチーフ等を抑え3.1倍の1番人気に推された。岡部幸雄騎手の桜花賞初制覇もかかっており、万全の仕上がりのはずだったが、スタートで出遅れ後方からのレースとなり、直線に入っても全く伸びずプリモディーネから約10馬身離された12着に沈む。デビュー4戦目で初の敗戦だった。

思わぬ大敗を喫したスティンガーは、二冠目の優駿牝馬には直行せず、トライアルである4歳牝馬特別(現:フローラステークス)に出走する。このレースでは桜花賞2着のフサイチエアデールに1番人気を譲ったが、これをクビ差退け1着。桜花賞の惨敗から巻き返しを見せる。

優駿牝馬では1番人気トゥザヴィクトリーと差のない4.8倍の2番人気に推されていた。桜花賞優勝馬プリモディーネ、桜花賞4着のゴッドインチーフ、前走スティンガーに敗れたフサイチエアデール等の有力馬もオークス制覇をかけて出走していた。スティンガーは直線よく伸びたものの4着まで、トゥザヴィクトリーを差し切った伏兵ウメノファイバーが優駿牝馬を制覇した。

優駿牝馬後は休養に入り、秋に備えた。スティンガー陣営は秋シーズンの目標を天皇賞(秋)とすることを決定。通常は3歳牝馬三冠最終戦の秋華賞に向かうのが普通で、牡馬のしかも古馬が相手となる天皇賞に向かう牝馬はきわめて稀である。まずは天皇賞の前哨戦である毎日王冠に出走し、相手はグラスワンダーキングヘイローメジロドーベルなど歴戦の古馬が集まっており、スティンガーは8番人気に過ぎなかった。だが4着と善戦し、天皇賞に向かった。セイウンスカイが1番人気、ツルマルツヨシが2番人気でスティンガーは前走と同じ8番人気だった。レースは直線見せ場を作りスペシャルウィークの1馬身半差の4着に入った。続いてジャパンカップにも出走したがさすがに距離も長く最下位の14着、この後はマイル路線を中心に使われていくことになる。

4歳時[編集]

年が明け京都牝馬特別に出走し、エイシンルーデンス以下を下して2000年を幸先のいいスタートで始めた。3ヶ月の休養を挟んで出走した京王杯スプリングカップでは上昇著しいブラックホークや同期のオークス馬ウメノファイバーらを相手に快勝した。そして安田記念に1番人気で出走するも末脚が不発に終わりフェアリーキングプローンの4着に敗退し休養に入った。

アメリカ遠征のプランもあったが実現せず12月の阪神牝馬特別で復帰した、ここをトゥザヴィクトリーの10着と大敗し2000年を終えた。

5歳時[編集]

2001年東京新聞杯から始動しオリビエ・ペリエを鞍上に迎えたが3着と不調が続く。その後は前年と同じように休養に入り、復帰戦を京王杯スプリングカップとした。このレースで1年ぶりの勝利をあげ、同時に史上初となる京王杯スプリングカップ連覇を達成した。この後は再び不調に陥り安田記念15着、関屋記念5着、札幌記念7着、阪神牝馬ステークス3着で2001年は1勝で終わった。

6歳時[編集]

スティンガーも6歳になり、あと1,2走で引退することが決定された。まずは東京新聞杯に出走し6着と叩いた後、引退レースとなる高松宮記念に出走した。このレースでは逃げ馬が1着2着と入線するという先行馬有利の中、最後方から追い込んでの3着で現役を終えた。

引退後[編集]

引退後は千歳市の社台ファームで繁殖入りした。

2003年12月1日フレンチデピュティの仔を受胎したままアメリカに渡り、2年間の予定で現地で繁殖生活を送る。2004年キングマンボと交配、2005年フサイチペガサスを種付けした後日本に帰国する予定であったが不受胎に終わったためアメリカに残留し、翌年スマーティージョーンズと交配された後、2006年12月5日に日本に帰国している。その後国内で11年間繁殖牝馬として生活し2017年に用途変更となる[6]。その後は社台ブルーグラスファームにて功労馬として余生を送っていた[7]が、2023年9月21日に老衰のため同地において死亡した[8]

競走成績[編集]

以下の内容は、JBISサーチ[9]およびnetkeiba.com[10]に基づく。

競走日 競馬場 競走名 距離(馬場)


オッズ
(人気)
着順 タイム
(上り3F)
着差 騎手 斤量
[kg]
1着馬(2着馬) 馬体重
[kg]
1998.11.08 東京 3歳新馬 芝1800m(良) 9 3 3 001.90(1人) 01着 R1:53.6(34.9) -0.1 0岡部幸雄 53 (ハートブレイクヒル) 452
0000.11.29 東京 赤松賞 500万下 芝1600m(良) 12 8 11 001.50(1人) 01着 R1:37.1(37.2) -0.4 0岡部幸雄 53 (ステファニーチャン) 452
0000.12.06 阪神 阪神3歳牝馬S GI 芝1600m(稍) 13 8 12 005.20(3人) 01着 R1:37.0(36.9) -0.3 0横山典弘 53 (エイシンレマーズ) 444
1999.04.11 阪神 桜花賞 GI 芝1600m(良) 18 4 8 003.10(1人) 12着 R1:37.0(37.2) -1.5 0岡部幸雄 55 プリモディーネ 448
0000.05.01 東京 4歳牝馬特別 GII 芝2000m(良) 16 7 14 002.70(2人) 01着 R2:01.4(35.3) -0.0 0岡部幸雄 54 フサイチエアデール 448
0000.05.30 東京 優駿牝馬 GI 芝2400m(良) 18 1 2 004.80(2人) 04着 R2:27.1(35.0) -0.2 0岡部幸雄 55 ウメノファイバー 442
0000.10.10 東京 毎日王冠 GII 芝1800m(良) 10 2 2 026.10(8人) 04着 R1:46.0(35.1) -0.2 0岡部幸雄 54 グラスワンダー 450
0000.10.31 東京 天皇賞(秋) GI 芝2000m(良) 17 6 11 018.00(8人) 04着 R1:58.3(35.2) -0.3 0岡部幸雄 54 スペシャルウィーク 450
0000.11.28 東京 ジャパンC GI 芝2400m(良) 14 3 4 027.2(10人) 14着 R2:29.5(40.1) -4.0 0横山典弘 53 スペシャルウィーク 456
2000.01.30 京都 京都牝馬特別 GIII 芝1600m(良) 11 3 3 001.70(1人) 01着 R1:34.9(34.1) -0.0 0O.ペリエ 56 エイシンルーデンス 456
0000.05.14 東京 京王杯SC GII 芝1400m(良) 18 8 17 011.00(5人) 01着 R1:21.0(33.6) -0.3 0武豊 55 ブラックホーク 460
0000.06.04 東京 安田記念 GI 芝1600m(良) 18 3 6 004.50(1人) 04着 R1:34.2(35.2) -0.3 0田中勝春 56 フェアリーキングプローン 464
0000.12.17 阪神 阪神牝馬特別 GII 芝1600m(良) 14 5 8 003.90(2人) 10着 R1:35.6(35.4) -1.8 0武豊 56 トゥザヴィクトリー 472
2001.01.30 東京 東京新聞杯 GIII 芝1600m(稍) 13 6 8 004.50(2人) 03着 R1:34.7(35.7) -0.5 0O.ペリエ 58 チェックメイト 474
0000.05.13 東京 京王杯SC GII 芝1400m(良) 18 8 17 005.90(2人) 01着 R1:20.1(34.3) -0.1 0岡部幸雄 56 (スカイアンドリュウ) 482
0000.06.03 東京 安田記念 GI 芝1600m(良) 18 2 3 004.60(2人) 15着 R1:34.4(36.4) -1.4 0岡部幸雄 56 ブラックホーク 484
0000.08.05 新潟 関屋記念 GIII 芝1600m(良) 9 2 2 004.00(2人) 05着 R1:32.3(32.9) -0.5 0蛯名正義 57 マグナーテン 484
0000.08.19 札幌 札幌記念 GII 芝2000m(良) 9 8 9 006.60(3人) 07着 R2:01.6(35.7) -1.5 0横山典弘 55 エアエミネム 470
0000.12.16 阪神 阪神牝馬S GII 芝1600m(良) 16 5 9 007.40(4人) 03着 R1:33.7(34.7) -0.2 0田中勝春 56 エアトゥーレ 474
2002.01.27 東京 東京新聞杯 GIII 芝1600m(良) 12 5 5 007.70(6人) 06着 R1:38.3(36.2) -0.6 0田中勝春 59 アドマイヤコジーン 476
0000.03.24 中京 高松宮記念 GI 芝1200m(良) 18 8 16 010.50(4人) 03着 R1:09.0(34.6) -0.6 0田中勝春 55 ショウナンカンプ 474

繁殖成績[編集]

馬名 誕生年 毛色 厩舎 馬主 戦績 備考
初仔 フレンチアイドル 2003年 栗毛 フレンチデピュティ 栗東北橋修二
→栗東・友道康夫
(有)社台レースホース 5戦0勝 繁殖
2番仔 *スコルピオンキッス
Scorpion Kiss
2004年 栗毛 栗東・角居勝彦
西脇田中道夫
→美浦・鹿戸雄一
(有)社台レースホース
(地方所属時は吉田照哉名義)
中央14戦1勝
地方5戦5勝
米国産
繁殖
3番仔 *タイガーファング
Tiger Fang
2005年 黒鹿毛 Kingmambo 西脇・田中道夫
→美浦・藤澤和雄
船橋岡林光浩
(有)社台レースホース
(地方所属時は吉田照哉名義→再募集断念)→中央復帰時に吉田千津
地方9戦8勝
中央6戦2勝
南関東1戦1勝
米国産
4番仔 ブランジェリーナ 2007年 鹿毛 Smarty Jones 美浦・藤澤和雄
盛岡・櫻田勝男
山本英俊 中央9戦0勝
地方2戦2勝
持込馬
5番仔 サトノギャラント 2009年 黒鹿毛 シンボリクリスエス 美浦・藤澤和雄 里見治 中央38戦8勝 引退
6番仔 レッドマニッシュ 2010年 黒鹿毛 美浦・国枝栄 (株)東京ホースレーシング 中央25戦2勝 繁殖
7番仔 キングズオブザサン 2011年 芦毛 チチカステナンゴ 栗東・荒川義之 (有)社台レースホース 中央27戦3勝 引退
8番仔 コアコンピタンス 2013年 鹿毛 キングカメハメハ 美浦・国枝栄
→美浦・武市康男
佐賀・北村欣也
→船橋・坂本昇

→盛岡・櫻田康二

(有)社台レースホース
→(株)本城
67戦6勝 引退
9番仔 バーボネラ 2014年 栗毛 ハービンジャー 栗東・荒川義之 (有)社台レースホース 中央8戦0勝 繁殖
10番仔 マルルー 2015年 鹿毛 キングカメハメハ 栗東・牧田和弥 吉田千津 中央5戦0勝 繁殖
11番仔 クンタキンテ 2017年 栗毛 ローエングリン 美浦・杉浦宏昭
高知宮川浩一
小林善一 20戦0勝 引退

血統表[編集]

スティンガー血統 (血統表の出典)[§ 1]
父系 サンデーサイレンス系
[§ 2]

*サンデーサイレンス
Sunday Silence
1986 青鹿毛
父の父
Halo
1969 黒鹿毛
Hail to Reason Turn-to
Nothirdchance
Cosmah Cosmic Bomb
Almahmoud
父の母
Wishing Well
1975 鹿毛
Understanding Promised Land
Pretty Ways
Mountain Flower Montparnasse
Edelweiss

*レガシーオブストレングス
Legacy of Strength
1982 栗毛
Affirmed
1975 栗毛
Exclusive Native Raise a Native
Exclusive
Won't Tell You Crafty Admiral
Scarlet Ribbon
母の母
Katonka
1972 鹿毛
Minnesota Mac Rough'n Tumble
Cow Girl
Minnetonka Chieftain
Heliolight
母系(F-No.) Real Delight系(FN:9-c) [§ 3]
5代内の近親交配 アウトブリード [§ 4]
出典
  1. ^ JBISサーチ スティンガー 5代血統表2017年8月31日閲覧。
  2. ^ 競馬 スティンガーの繁殖牝馬情報2020年3月23日閲覧。
  3. ^ [11]
  4. ^ JBISサーチ スティンガー 5代血統表2017年8月31日閲覧。

母はアメリカで12戦1勝の成績を残している。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 藤沢は、赤松賞の発走が12時50分であったため、渋滞に巻き込まれることなく美浦に帰厩できたのが連闘で出走できた理由の一つに挙げている[5]

出典[編集]

  1. ^ スティンガー”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2022年5月4日閲覧。
  2. ^ 優駿』、日本中央競馬会、2000年2月、43頁。 
  3. ^ 優駿』、日本中央競馬会、2001年2月、34頁。 
  4. ^ 優駿』、日本中央競馬会、2002年2月、73頁。 
  5. ^ 『優駿』2009年12月号、59頁。 
  6. ^ スティンガー(JPN) - 血統書サービス、2022/3/5閲覧。
  7. ^ 2019年北海道牧場見学と帯広ばんえい競馬観戦の旅4日間 2022年4月21日閲覧。
  8. ^ 98年阪神3歳牝馬S覇者スティンガー死す、27歳老衰のため 社台ファーム東場長「感謝の思いつのる」”. スポーツニッポン. 2023年9月21日閲覧。
  9. ^ スティンガー 競走成績”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2023年9月22日閲覧。
  10. ^ スティンガーの競走成績”. netkeiba. Net Dreamers Co., Ltd.. 2023年9月22日閲覧。
  11. ^ 平出貴昭 (2019年9月18日). “『覚えておきたい世界の牝系100』掲載牝系一覧”. 競馬“血統”人生/平出貴昭. 2020年3月23日閲覧。

外部リンク[編集]