ジェモー

ジェモー』(Gémeaux )は、日本作曲家武満徹による「オーボエトロンボーン、2つのオーケストラ、2人の指揮者のための」作品。作曲に15年の歳月が費やされた。

作曲・初演[編集]

作曲[編集]

1971年から1986年の長きにわたり少しずつ作曲され、委嘱者が途中で降りたり、予定されていた第1楽章の演奏が演奏者によりキャンセルされたりと紆余曲折を重ねながら、1986年10月に全曲がサントリーホール開館記念のための委嘱作品 (サントリーホール国際作曲委嘱シリーズ) として初演された。当初のオーボエはハインツ・ホリガーを独奏者として構想された。

つねに“2”という数が支配的であり、瀧口修造の『手づくり諺』からの

きみの眼、きみの手、きみの乳房
きみはひとりの雙子だ

に大きな影響を受けた。演奏時間は約30分と、武満の曲にしては異例の長さである。

初演[編集]

ブルクハルト・グレッツナー(オーボエ)、ヴィンコ・グロボカール(トロンボーン)、尾高忠明指揮・東京フィルハーモニー交響楽団井上道義指揮・新日本フィルハーモニー交響楽団

曲の構成[編集]

管弦楽作品というより、大規模な室内楽曲の集合体の観をなしており、演奏者にも高度な技術が要求される。

「ジェモー」はフランス語ふたご座を暗示し、「ふたごの恋愛劇」は愛により合一を果たす、を表現しており、ふたつのもの、時に相反するものが愛により帰一する、分化と合一のプロセスを音楽により描いたものである。

ステージには男性を暗示するトロンボーンと女性を暗示するオーボエの独奏を配置し、それぞれに独立した指揮者とオーケストラを伴奏にあてるという、珍しい構成。そのため、演奏される機会は少ない。武満の生前にはサイモン・ラトルエディンバラで、ケント・ナガノバークリーで演奏した2回が作曲者自身によって観測されている。また、死後の2006年5月28日には、クリスティアン・リンドベルイ(トロンボーン)、古部賢一(オーボエ)、若杉弘(当初予定されていた岩城宏之は体調不良のため直前に降板。この直後岩城は死去)、高関健指揮、東京フィルハーモニー交響楽団によって演奏され、NHK-FMの「現代の音楽」で放送された。

  1. strophe
  2. genesis
  3. traces
  4. antistrophe

録音[編集]

上記の通り、多くの演奏が望めなかったため、武満自身この録音を非常に喜んだ。

また、2006年の演奏の模様は、当日の他のプログラムとともに「武満徹の宇宙 Cosmos of Toru Takemitsu」と銘打ってライブCDとして発売されている(2007年、財団法人東京オペラシティ文化財団・タワーレコード TOCCF-10)。

外部リンク[編集]