シャン州軍 (北)
| シャン州軍 (北) | |
|---|---|
| တပ်ႉသိုၵ်းၸိုင်ႈတႆး – ပွတ်းႁွင်ႇ ရှမ်းပြည်တပ်မတော်-မြောက်ပိုင်း ミャンマー内戦に参加 | |
 シャン州軍 (北)軍旗 | |
| 活動期間 | 1964年4月24日–現在 |
| 活動目的 | シャンナショナリズム フェデラル連邦制 |
| 創設者 | サオ・ナン・ハーンカム |
| 指導者 | パンファー中将[1] |
| 本部 | ミャンマー・シャン州ケシ郡区ワンハイ |
| 活動地域 | シャン州 |
| 兵力 | 10,000人以上[1] |
| 上位組織 | シャン州進歩党 |
| 前身 | シャン州軍 |
| 関連勢力 |
|
| 敵対勢力 | 敵対国 敵対勢力 |
| 戦闘 | ミャンマー内戦 |
| ウェブサイト | https://ssppssa.org/ |
シャン州軍 (北)（シャンしゅうぐん きた、シャン語: တပ်ႉသိုၵ်းၸိုင်ႈတႆး – ပွတ်းႁွင်ႇ、英語: Shan State Army – North、略称: SSA-N）はシャン州進歩党 (Shan State Progress Party: SSPP) の軍事部門であり、ミャンマーの反政府武装勢力である[1]。
名称[編集]
正式名称はシャン州軍（英語: Shan State Army: SSA）である。シャン語では「タイ[注釈 1]州[注釈 2]の軍隊」を意味する တပ်ႉသိုၵ်းၸိုင်ႈတႆး /tap˥˧ sʰɨk˥ tɕɨŋ˧ taj˥/ と呼称する。同じく「シャン州軍」を自称するシャン州軍 (南)と区別する目的から、英語では Shan State Army - North（SSA-N）[8]、あるいは政治部門の略称を冠して SSPP/SSA と呼称されることが多い。中国語では北掸邦军[9]と呼称されている。
日本語訳は定まっておらず、「シャン州軍 (北)」の他に「シャン州軍北」[10]「シャン州軍北部」[11]「北シャン州軍」[8]などの表記が存在する。本記事では便宜的に「シャン州軍 (北)」表記で統一する。
歴史[編集]
背景[編集]
1958年5月21日、ヌームスクハンが結成された。
SSA黎明期 (1964-1976)[編集]
1964年4月24日、ニャウンシェの王妃サオ・ナン・ハーンカムの助力によりシャン州独立軍とシャン民族統一戦線が合併し、シャン州軍が結成された[12]。
1971年8月にはシャン州進歩党がシャン州軍の政治部門として設立された[13]。
当時、シャン州ではビルマ共産党 (Communist Party of Burma: CPB) の影響力が拡大していた。CPBは物資を支援する一方でCPBとの同盟に非協力的なクン・チャー・ヌ (サオ・セン・スック) やサオ・ソー・ワイ (サオ・ツァン) らシャン州進歩党の指導部を「反動主義者」と非難した[14]。SSPP内部でのCPBとの協力を巡る対立は年々激しさを増してゆき、最終的に親CPBの北部軍区と反共の南部軍区の分裂を招いた[15][16]。1976年3月の党内クーデターにより、クン・チャー・ヌやサオ・ソー・ワイはSSPPから放逐された[17][18]。
ビルマ共産党との同盟 (1976-1989)[編集]
北部軍区[編集]
北部軍区のSSPP指導部は、武器の供給と引き換えにビルマ共産党の指導を受け入れることを承諾した。
ビルマ共産党がシャン州軍に軍事支援を行い、同盟関係を構築したのは、ビルマ共産党の根拠地のある中緬国境からシャン州をスムーズに通過して平野部に侵攻できるようにするためであった。
南部軍区[編集]
1983年、クン・サのシャン連合軍による本部モンマイへの攻撃を受けてSSA第2旅団は崩壊状態に陥り、一部はSSA第7旅団に合流した[19]。
1984年、SSA第7旅団に合流しなかった旧SSA第2旅団はシャン連合革命軍に合流し、タイ革命評議会 (Tai Revolutionary Council; TRC) を結成した[19][18]。1985年、タイ革命評議会はシャン連合軍の圧力に屈し、クン・サの軍門に下ることとなった。そして、クン・サの下で勢力が統合され、モン・タイ軍となった[20]。
SLORC・SPDC政権期 (1989-2011)[編集]
1989年春、ビルマ共産党は下士官の反乱により内部から崩壊した。ビルマ共産党の崩壊を受け、1989年9月2日にシャン州軍 (北)は軍事政権と停戦交渉を行い、支配地域の自治を認められた。そして、ナムカム、ランコー、シッポー、チャウメー、モンスー、タンヤン、モンヤイ、ケシ、ラーショー郡区を含む支配地域がシャン州第3特区となり、シャン州軍(北)による自治が行われた。停戦当時の兵力は4000人程であったとされる。
停戦を認めないサイ・レック一派はシャン州軍 (北)から分裂して引き続き戦闘を続けたが、1994年にクン・サ率いるモン・タイ軍に合流した。その翌年にサイ・レックはモン・タイ軍の本拠地ホーモンで死去した[21]。
1996年、シャン州軍 (北)およびシャン州民族軍はシャン州平和評議会を創設した。同年9月、これにシャン州軍 (南)を加える形で3組織合同の政治部門「シャン州民族機構」および軍事部門「シャン州軍」を創設することが1996年9月の協議で決定した[22][23][24][25]。しかしながら、統合に向けた進展はないまま終わった[6]。
シャン州軍 (北)は他のシャン族武装勢力に比べれば政府に対して融和的であったが、2005年には武装解除せず、その代わりに基地を放棄した[26]。
2008年憲法との整合性を取るために、軍事政権がシャン州軍 (北)に対して国軍傘下の郷土防衛隊 (Home Guard Force: HGF) に転換するように圧力をかけた際は、3個旅団中2個旅団が郷土防衛隊への転換に同意したが、第1旅団のみが転換を拒否した。第3旅団と第7旅団は2010年5月10日に国軍傘下の民兵となった。
2011年2月、シャン州軍 (北)は他の少数民族武装組織と共にビルマ統一民族連邦評議会 (UNFC)を結成した[27]。
テインセイン政権期 (2011-2015)[編集]
2011年5月21日、シャン州軍 (北)はシャン州軍 (南)の本部ロイタイレンにてシャン州軍 (南)と合同で記者会見を開いた。シャン州軍 (南)のヨートスックは「もはやシャン州軍に南北はなく、一つである。」と発言した[28]。
2014年9月から10月にかけて、シャン州軍 (北)は本部ワンハイのあるケシ郡区でミャンマー軍と衝突した[29][30]。
2015年10月6日に始まるミャンマー軍の大規模な攻撃では、20個大隊がシャン州中部に投入された。国軍の目標は、ケシ、モンノーン、モンスー、タンヤン郡区を制圧することであり、戦闘機・ヘリからの航空支援のもと、重火器による無差別な砲撃・爆撃が民間人居住区になされた。この攻撃により、何千人ものシャン族、タアン族、リス族、ラフ族が家を追われ、人道危機が発生した[31][32]。
NLD政権期 (2016-2021)[編集]
2017年4月に連邦政治交渉協議委員会 (FPNCC)が結成されると、シャン州軍 (北)はFPNCCに軸足を移し、同年8月にUNFCからの離脱を申請した[33]。
シャン州軍 (北)はタアン民族解放軍と同盟しており、前哨基地を共有していたため、2015年以降のタアン民族解放軍とシャン州軍 (南)の戦闘に巻き込まれることとなった。2018年以降、シャン州軍 (南)との戦闘が激化した。2019年には一度停戦合意がなされたが、2021年には戦闘が再開した。
国家行政評議会政権期 (2021-)[編集]
2022年、シャン州軍(北)はシャン州軍 (南)をタイ国境地域へと放逐し、タアン民族解放軍は勝利宣言した[34]。2023年11月29日、シャン州軍 (北)はシャン州軍 (南)との停戦を宣言した[35]。
2023年8月以降、同盟関係であったシャン州軍 (北)とタアン民族解放軍との関係が悪化し、複数回衝突が発生した[36][37]。タアン民族解放軍はナムカムにおいてシャン州軍 (北)が徴兵・課税を行わないよう要請した[38]。
2024年1月30日、SSPPは反軍事政権の立場を明らかにする声明を出した[39]。同年2月12日、SSPPは連邦記念日に際し、チン民族戦線およびカチン独立機構と連名で国民統一政府に祝電を送った。これはシャン州軍 (北)がクーデター以降国民統一政府に送った初めてのメッセージである[40]。
2024年2月12日、軍事政権による徴兵制の施行を受けてシャン州軍 (北)は海外渡航を禁止し、違反者の財産を没収すると発表した[41]。
組織構造[編集]
軍事部門[編集]
シャン州軍 (北)には元々第1・第3・第7旅団が存在した[42]。しかし、2009年に第3師団と第7師団が国軍傘下の郷土防衛隊となることに同意し、第1旅団のみが残った[43]。
その後のシャン州軍 (北)は第1旅団を拡張して再構成されており、2023年時点で8個旅団30個以上の大隊を擁しているとされる[44]。
部隊構成[編集]
SSPP/SSAのワンハイ本部には本部警備大隊が2個大隊、特殊大隊が3個大隊駐屯している。また、支配地域には3個師団が編成されている[45][46]。
- 第999師団: 第1旅団（4個大隊）、第153旅団（3個大隊）、第612旅団（4個大隊）
- 第909師団: 第72旅団（5個大隊）、第74旅団（5個大隊）
- 第918師団: 第36旅団（4個大隊）、第27旅団（4個大隊）、第702旅団（4個大隊）
政治部門[編集]
シャン州軍 (北)の政治部門であるシャン州進歩党は軍の事務局という扱いであり、支配地域における統治組織の役割を果たしていない[47]。これはシャン州軍 (南)の政治部門であるシャン州復興評議会が支配地域における行政を担っているのと対照的である。
行政区画[編集]
シャン州軍 (北)の支配地域は9の行政区で構成されている[46]。
- 第1地区: タンヤン、モンスー、モンコン
- 第3地区: モンノーン、ケシ、ワンハイ
- 第4地区: セインチョー、ノーンモン、ナーマコー
- 第5地区: モンヤイ、モントン、モンパン、ワンリー
- 第6地区: シポー、チャウメー、モンミッ
- 第7地区: ノーンキョー、ポンウォー
- 第8地区: モンヤン、ナムトゥ
- 第9地区: ナムカム、ムセ、パンサイ
- 第10地区: センウィー、モンヨー、ラシオ
第2地区は欠番であり、合計9地区が存在する。1 地区の下に3つの郡区が存在するため、合計27 の郡区が存在する。2022年の対シャン州軍 (南)戦闘の後、シポー、パンロン、モンクン、ホーポン郡区のシャン村落にも統治が拡大している[46]。
批判[編集]
強制徴募[編集]
シャン州軍 (北)は若者に対して暴力的な強制徴募を行っているという報告がなされている[48][49][50][51]。また、両親を拉致して入隊させるといった手法も取られている[52]。
民間人の拉致・恐喝[編集]
シャン州軍 (北)は民間人の拉致・恐喝を行っていることが報告されている[53]。
民間人に対する暴力[編集]
2023年5月、シャン州軍 (北)の兵士が民間人を拷問している動画がインターネット上に流出した[54]。シャン州軍 (北)は民間人を拷問したことを認めたが、その後拷問された民間人が解放されたかは定かでない[55]。
関連項目[編集]
脚注[編集]
注釈[編集]
出典[編集]
- ^ a b c “Shan State Progress Party/Shan State Army (SSPP/SSA – North)” (英語). Myanmar Peace Monitor. 2023年4月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年2月20日閲覧。
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- ^ Tzang Yawnghwe 2010, p. 30.
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参考文献[編集]
日本語文献[編集]
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