クルマバソウ

クルマバソウ
福島県会津地方 2010年5月下旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 Eudicots
階級なし : キク上類 Superasterids
階級なし : キク類 Asterids
階級なし : シソ類 Lamiids
: リンドウ目 Boraginales
: アカネ科 Rubiaceae
亜科 : アカネ亜科 Rubioideae
: ヤエムグラ属 Galium
: クルマバソウ G. odoratum
学名
Galium odoratum (L.) Scop.[1]
シノニム
  • Asperula odorata L.[2]
和名
クルマバソウ(車葉草)[3][4]

クルマバソウ(車葉草、学名Galium odoratum)は、アカネ科アカネ亜科ヤエムグラ属多年草[3][4][5]。以前は同科同亜科の近縁の属である Asperula 属の種とされていた[2][6]が、現在はヤエムグラ属に移されている[1][3][4][5]

特徴[編集]

地下茎は長く横に這い、繁殖する。は直立し、高さは20-30cmになり、途中で分枝せず、断面は四角形で毛は無い。は6-10個が輪生し、葉身は長さ1.5-4cm、幅0.3-1.3cm、狭長楕円形または倒披針形で、先は鋭頭、基部に葉柄はない。葉はやや厚く、光沢があり、表面の1本の中脈が目立ち、縁と裏面の葉脈上に上向きの剛毛が生える。葉の裏面の基部が接する茎の節部には開出する短毛が生える。これらの輪生する葉は、対生する本来の2個の葉と、残りの4-8個の、葉と同形の托葉となる[3][4][5][6]

花期は5-7月。茎先に2-3出状の集散花序を出し、4-12個の花をつける。筒は径0.5-0.8mmの半球形または鐘形になり、黄緑色で、短毛が生える。花冠は径2-5mm、白色で漏斗形で、先は4裂し、花冠裂片は卵形となり、裂片の長さ1.5-3mm、花冠筒部の長さは1.2-2mmとなる。雄蕊は4個あり、花冠筒部に付着する。子房は下位で、2室に分かれ、各室に1個の胚珠がある。花柱は短く2裂する。果実は乾いた2個の分果となり、2分果で見かけ上1個の球形となり、各分果に1個の種子がある。分果には先が鉤状になった長い毛が密生する[3][4][5][6]

同属のクルマムグラ Galium japonicum に似るが、同種の葉は本種と比べ薄く、乾燥すると黒色になる。一方、本種は葉がやや厚く光沢があり、乾燥しても黒色にはならず淡緑色になる。また、花、果実の状態も異なる[4][5]

分布と生育環境[編集]

日本では南千島、北海道、本州に分布し、林中の木陰に生育する[3][4][5]。世界では、朝鮮半島サハリンからヨーロッパ北アフリカに広く分布する[5]

名前の由来[編集]

和名クルマバソウは、「車葉草」の意で、輪生する葉の形や大きさに違いがなく、放射状、車輪状に見え、そのつき方から「車葉」の名がついた[3][4]

種小名(種形容語)odoratum は、「芳香のある」「香りのよい」の意味[7]

利用[編集]

乾燥させると淡緑色になり、クマリン芳香がある。ベルギーワロン地方ではこの乾燥体で香りをつけたメトランク(Maitrank:フランス語版)という白ワインが生産されている[5]

欧州ではウッドラフと呼ばれハーブおよび民間薬として用いられる。効能は香気成分によるリラックス及び睡眠誘引や悪心回復(吐き気止め)、健胃、強壮、利尿、遍頭痛などの鎮痛、鎮静、止血及び傷薬、肝機能改善による肝炎予防、静脈瘤予防。またリーフにして防虫にもされる。[8][9][10]

※ただし禁忌および注意点として、妊娠中・授乳中は使用を避ける。肝機能障害のある人は使用を避ける。抗凝血剤を使用している患者は使用を避ける。等が上がる。[11]

またドイツなどではヴァルトマイスター(Waldmeister)と呼ばれ、クマリンの芳香があるためビールリキュール、ジュースに入れて飲むこともある[4]。またアイスソース及びアイスクリーム、ケーキ、ゼリー、グミ菓子、キャンディなど菓子類の風味付けにも使われる。

利用方法[編集]

橋本郁三の『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』によると本種を利用した料理等に次のようなものがある[12]

  • 花、蕾、葉を生のまま、ちらし寿司の上に飾り、食す。
  • 上記のものを肉料理の付け合わせとする。
  • 蕾の頃にきれいな地上部を採集し、2-3日間日陰干しにして乾燥させるとクマリンの芳香がでる。その乾燥体をネットに包み、2倍量のホワイトリカーウォッカに漬け込み、アルコールが淡いレモン色になったら乾燥体を引き上げる。そのままでも飲めるが、4-5月寝かせ、アルコールがゴールデンイエローになった頃が香りもよい。

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b クルマバソウ「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  2. ^ a b クルマバソウ(シノニム)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b c d e f g 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.392
  4. ^ a b c d e f g h i 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.970
  5. ^ a b c d e f g h 内貴章世 (2017)「アカネ科」『改訂新版 日本の野生植物 4』p.273
  6. ^ a b c 山崎敬 (1981)「アカネ科」『日本の野生植物 草本III合弁花類』p.55
  7. ^ 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1505
  8. ^ [1]
  9. ^ [2]
  10. ^ [3]
  11. ^ [4]
  12. ^ 『食べられる野生植物大事典(草本・木本・シダ)』p.253

参考文献[編集]