ライフ・カイサ

ライフ・カイサ(またはレイフ・カイサライフ・カイサー、Leif Kayser、1919年6月13日 - 2001年6月15日 )は、デンマーク作曲家オルガニストカトリック司祭。カトリック教会のためのオルガン声楽作品などをはじめ、管弦楽や室内楽など幅広い分野にわたって作品を残した。

生涯[編集]

コペンハーゲンで国会速記者の父のもとに生まれ[1]、カトリック系の聖クヌーズ学校で学ぶ[2]。幼いころから音楽に興味を示し、実家で音楽教育を受けるとともに[3]、少年合唱団に所属してグレゴリオ聖歌に習熟した[4]。また、カイサは司祭のA.メンシンガにオルガニストのクアト・トムセンを紹介され、オルガンを習った[5]。1936年にコペンハーゲンのデンマーク音楽アカデミーに入学し、1941年まで在学した[6]。アカデミーでは、ポール・ロング=ケラー(オルガンと音楽理論)、ポール・シーアベック管弦楽法)、ハラルドゥル・シグルソンピアノ)、クリスチャン・サンビュー室内楽)、ルドルフ・シモンセン音楽史)に師事した[7]。1938年にオルガンの、1939年にピアノの試験に合格したあと[6]ストックホルムに留学し、ヒルディング・ルーセンベリ(作曲)とトゥール・マン(指揮)に師事した[8]

カイサはアカデミー在学中に作曲を始めた。はやくも1939年2月に、交響曲第1番がヨーテボリでマンの指揮によって初演されて評判を呼び、翌年の夏には交響曲第2番が披露された[9]。指揮者のエリク・トゥクセンに勧められ、カイサはクリスチャン10世の70歳の誕生日(1940年9月26日)のために、デンマーク国歌による序曲『クリスチャン王は高き帆柱の傍に立ちて』を作曲し[8]、同月に初めての出版譜として『ヴァイオリン独奏のための7つの小品』を上梓した[9]1941年にはピアニストとして初舞台を踏み[6]、同年の12月にはヨーテボリで指揮者としてもデビューした[7]

しかし1942年にとつぜん、カイサは音楽活動を中断してカトリック司祭になることを志し、ローマに留学して神学と哲学を学んだ[8]。1949年に司祭に叙階されてデンマークに戻り、コペンハーゲンの聖アンスガー教会に就いた[8]

作曲活動はローマ滞在中から再開しており、1955年にはパリに留学してナディア・ブーランジェに師事した[8]。1964年に司祭の職を辞し、デンマーク音楽アカデミーで管弦楽法と楽曲分析の教員となって1982年まで勤めた[7]。教え子には作曲家のニルス・ラ・クールがいる[10]

様式[編集]

残された教会音楽の数々や交響曲第2番の冒頭、オルガン協奏曲の最終楽章コーダなどに示されるように、カイサはグレゴリオ聖歌から霊感を得ている。カイサは、この世代のデンマークのほとんどの作曲家がそうであったようにカール・ニールセンの影響下にあり、ほかにも、20世紀前半の代表的作曲家であったイーゴリ・ストラヴィンスキーパウル・ヒンデミットバルトーク・ベーラの影響が見られる。とくにヒンデミットについては、カイサが彼の『作曲の手引き』を講義に使っていたことからもその影響が示唆される[11]

主な作品[編集]

管弦楽[編集]

  • 交響曲第1番(1937-38、1940改訂)
  • 交響曲第2番(1939)
  • 交響曲第3番(1943-53)
  • 交響曲第4番(1945-63)
  • 序曲『クリスチャン王は高き帆柱の傍に立ちて』(1940、1945-46改訂、吹奏楽版あり)
  • 管弦楽のためのディヴェルティメント(1946-48)

室内楽[編集]

  • ヴァイオリン独奏のための7つの小品(1941)
  • リコーダー四重奏のためのディヴェルティメント第1番(1968)、第2番(1969-73)
  • フルートとオルガンのためのカレイドスコープ(1974-76)
  • チェンバロ五重奏曲(1990)

オルガン[編集]

  • 復活祭のグレゴリオ聖歌の動機によるパラフレーズ(1946)
  • もろびと声あげ』による変奏曲(1947-48、1984改訂)
  • ソナチネ(1956)
  • レクイエム ― 11の瞑想曲(1955-58)
  • オルガンのための協奏曲(1965)
  • 4つの組曲(1956-73)
  • 幻想曲と賛歌(1969)
  • 教会の窓(1975)
  • アヴェ・マリア』によるトッカータ(1980)
  • クヌーズ公爵への賛歌(1986)

アコーディオン[編集]

  • 10のアラベスク(1974-75)
  • 即興曲(1991)
  • コンフェッティ(1974-92)

合唱[編集]

  • クリスマス・オラトリオ(1943-47)
  • テ・デウム(1946-53)
  • マリアの賛歌(1986)

脚注[編集]

文献[編集]

  • Leif Kayser”. Dansk Komponist Forening. 2015年1月11日閲覧。
  • Leif Kayser - Dansk Biografisk Leksikon”. Gyldendal, Den Store Danske. 2015年1月12日閲覧。
  • La Cour, Niels (1977-1978). “Leif Kayser i dag”. Dansk Musik Tidsskrift 52: 13-18. http://dvm.nu/periodical/dmt/dmt_1977-1978/dmt_1977-1978_01/leif-kayser-i-dag/ 2015年1月12日閲覧。. 
  • Berger, Günter (1994). "Der Komponist Leif Kayser. Reflexionen zu Struktur und Charakter von »Concerto per Organo«", Aspekte der Orgelbewegung, Alfred Reichling (Ed.), Kassel, Germany: Merseburger Verlag, 483-514.
  • Kengen, Knud-Erik (1991). Templum Domini - Vocal and organ compositions by Leif Kayser (Media notes). Point. PCD 5097。
  • Frederiksen, Jørgen Ellegård (2001). Organ Works (Media notes). Dacapo. 8.224167。
  • Garnæs, Mikael (2007). Symphonies Vol. 1 (Media notes). Dacapo. 8.22470。
  • Strimple, Nick (2005). Choral Music in the Twentieth Century. Amadeus Series. Hal Leonard Corporation. pp. 150-151. ISBN 9781574671223. https://books.google.co.jp/books?id=qepYmsiSnwoC&redir_esc=y&hl=ja 2010年1月11日閲覧。 
  • Christensen, Jean (2002). "New music of denmark", New Music of the Nordic countries, John David White (Ed.), Hillsdale, NY: Pendragon Press. ISBN 9781576470190