エネルギーの単位

エネルギーの単位(エネルギーのたんい、: units of energy)には、様々なものがある。それは、エネルギーが多様な形態を取ることができ、それにより多数のエネルギーの定義法があるためである。

仕事による定義[編集]

エネルギーは、等価の仕事により定義できる。国際単位系(SI)におけるエネルギーの単位であるジュール(J)は、「1ニュートン(N)の力がその力の方向に物体を1メートル(m)動かすときの仕事」と定義されており、力の単位と長さの単位から組み立てられている。SI基本単位からは以下のように組み立てられる。

仕事により定義された(力と長さの単位から組み立てられた)エネルギーの単位には、他に以下のものがある。

仕事率による定義[編集]

仕事率は単位時間あたりの仕事なので、逆に仕事率に時間を掛ければ仕事が求められる。電力量の計量によく用いられるキロワット時(kW・hまたはkWh[注釈 1])は、「1時間(h)あたり1キロワット(kW)の仕事率の仕事」と定義される。

仕事率と時間の単位から組み立てられたエネルギーの単位には、以下のものがある。

熱量による定義[編集]

熱量もエネルギーと等価である。熱量のSI単位は、仕事の単位と同じ「ジュール」または「ワット秒」である[1]。計量法は非SI単位の「ワット時」の使用を認めている。

これ以外に、非SI単位として「カロリー」があり、かつては広く用いられたが、現在では、できるだけ使用せず、もし使用する場合にはジュール(J)の値を併記することになっている。国際単位系(SI)においては、カロリーはSI併用単位にも位置づけられていない。計量法においても、カロリーは栄養学の分野などの特殊の用途にのみ用いることができる単位(計量法#用途を限定する非SI単位)にすぎない。カロリーの由来は「1グラムの水の温度を1上げるのに必要な熱量」であった。

日本の計量法における特殊の用途に用いる熱量の計量単位には、以下のものがあるが、それぞれ、使用の範囲が限定されている。

核物理学[編集]

核物理学素粒子物理学高エネルギー物理学においては、エネルギーの単位として電子ボルト(eV)が使われる。電子ボルトは「電子が真空中で1ボルトの電位差を通過することによって得る運動エネルギーである。[2]」と定義されており、その値は正確に1.602176634×10−19 Jである。電子ボルトは計量法上は非法定計量単位であり、取引・証明における使用は禁止されている。

原子単位系ハートリー(hatree)やリュードベリ(rydberg)も、計算においてよく用いられる。

分光学[編集]

分光学では、エネルギーレベルが波数の単位である毎センチメートル(cm−1)で計測される。毎センチメートルは厳密にはエネルギーの単位ではないが、Eはエネルギー、hプランク定数、νは光の周波数c光速度、λは波長)の関係式から波数とエネルギーは比例関係にあり、その比例係数はである[3]

燃料による定義[編集]

特定の質量の燃料を燃焼させた時に得られるエネルギーを単位とする。以下のような単位がある。

100,000英熱量に等しいサーム(約 105.5 MJ)は、100立方フィート天然ガスを燃焼させたときに得られるエネルギーにほぼ等しい。

爆発力による定義[編集]

爆発核爆発により放出されるエネルギーや、火球隕石の衝突によるエネルギーの総量については、TNT換算がよく用いられる。

1グラムトリニトロトルエン(TNT)は、爆発により980 - 1100カロリーのエネルギーを放出する。計算を簡単にするために、TNT換算グラムは正確に1000カロリーと定義されており、TNT換算トンは109カロリーとなる。上述のようにカロリーには複数の定義があるが、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)では熱力学カロリー(1カロリー = 4.184ジュール)を使用して、TNT換算トンを正確に4.184×109 ジュールとしている[4]

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 記号は、仕事と熱量については kW・h であり、電力量については kWh である。単位記号のkW・h と kWh との違いについては、キロワット時#単位記号を参照のこと。

出典[編集]