エテジアン

地表付近では、図左のヨーロッパ中部の高気圧からは時計回りに風が吹き出し、図右のアナトリア半島低気圧には反時計回りに風が吹き込み、それらの中間では北風となる

エテジアンギリシア語:meltemiμελτέμι〉、トルコ語:meltem:Etesian)とは、ギリシャトルコエーゲ海沿岸地域で季に吹く、乾燥した強い北風のこと[1]。エテジア、エテジア風とも言う。

夏になると、バルカン半島やヨーロッパ中部に高気圧、トルコ(アナトリア半島)に低気圧が発生しやすくなる。これは、の日本付近と似た西高東低の配置であり、高気圧と低気圧の間では強い北風が吹くことになる。これがエテジアンである。アドリア海イオニア海沿岸でも同様の風が吹く。エーゲ海北部ではおもに北東、中部では北、クレタ島などの南部では北西の風となることが多い。

5月中旬から9月中旬にかけての間発生する。夏の暑い日、晴天にもかかわらずエテジアンの強風が吹き荒れる日も多々ある。1日のうちでは午後の時間帯が最も強く、間は収まることが多いが、1日中吹き続けることもある。一般的に、強風の吹き始めには雲が出るなどの予兆がみられるが、エテジアンの場合は快晴でも吹き荒れる場合が多く、船乗りにとっては危険な風として知られている。エテジアンの風は最大で風力7~8(約14~21 m/s)程度に達し、ヨットなどは危険のため航行ができなくなる。

大陸部の空気発祥の風であるため乾燥しており、山越えによるフェーン現象も加味されて北風であるにもかかわらずあまり寒くない。むしろ高温の場合が多く、乾燥しているため山火事を誘発する。一方、エーゲ海南端のキプロスでは、エテジアンが水蒸気を含んで変質し、湿った風になる。

語源[編集]

「エテジアン」の名称は古代ギリシャ語έτος(étos、1年中)吹き続ける風、つまり恒常風[2]を意味する「ετησίαι」に由来する。そのラテン語表記「etesiae」が英語名「etesian」となり、日本語名として使われている。トルコ名「meltem」は、イタリア語mal tempo(悪天候)からきた借用語である。

地中海東部で広く発生する夏の季節風であり[3]地中海性気候を特徴づける要素の1つである。地中海性気候を「etesian climate」(エテジアン気候)と呼ぶこともあるほど。

脚注[編集]

出典[編集]

  1. ^ M, Tombrou; E, Bossioli; J, Kalogiros; J.d, Allan; A, Bacak; G, Biskos; H, Coe; A, Dandou et al. (2015). “エテジアン期間のエーゲ海における気団の物理的並びに化学的プロセス:エーゲ海-GAME空中調査” (英語). Science of the Total Environment 506/507: 201–216. ISSN 0048-9697. https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201502213866217150. 
  2. ^ まとめ表:008 風の種類」(PDF)『GEO』第32巻第41号(通号220)、第一学習社、26-27頁。 
  3. ^ 「東部地中海域における夏季エテジアンの気候学と力学」Evangelos, Tyrlis; Jos, Lelieveld (2013). “東部地中海域における夏季エテジアンの気候学と力学” (英語). Journal of the Atmospheric Sciences 70 (11): 3374–3396. ISSN 0022-4928. https://jglobal.jst.go.jp/detail?JGLOBAL_ID=201302224072248309. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]