エッサイ

オール・セインツ教会にあるステンドグラスのエッサイの部分図。イングランドイースト・サセックス州、ホーヴ

エッサイ英語: JesseまたはYishay, ヘブライ語 יִשַׁי, ギリシア語: Ιεσσαί)とは、『旧約聖書』の登場人物。ヘブライ語יהוה(ヤハウェ)が存在する、あるいはヤハウェが賜る、あるいは王という意味。古代イスラエル王国第2代王ダビデの父。日本正教会ではイエッセイと転写される[注釈 1]

人物・略歴[編集]

『旧約聖書』によれば、ルツボアズの孫で、イスラエル史上最大の繁栄をもたらし、後世理想の王とたたえられたダビデの父[1]。また、ユダベツレヘム出身で8人の息子がいたとされる。長男はエリアブ、次男はアビナダブ、三男はシャンマで、末の子がダビデだった[2]

末の子が王に選ばれる[編集]

預言者サムエルサウルに代わる王を探すため、神の指示によって年老いたエッサイの下へ遣わされた[3][4]。サムエルは長男エリアブの容姿に感銘を受け、「自分の前にいるこの人こそ、主が油をそそがれる人だ」と思ったが、すぐ神に否定される[5]。エッサイは自分の息子を順にサムエルに見せるが、どれも王となる者ではなかった[6]。そこで、一番年下のダビデを連れて来させると、神はその子に油を注ぐよう指示した[7]

のちにサウル王が自分のために竪琴の名手を召すため、エッサイのもとへ来ると、彼は多くの贈り物とともにダビデを送り出した[8]。サウル王はダビデをとても気に入ったため、ダビデは武器を執る者としてサウル王に仕える事になった[9]

息子たちの安否を確認[編集]

ペリシテ人が陣営を敷くと、エッサイの三人の息子は戦いに出向いた。エッサイはダビデに兄たちに食料を送り、安否を確認するよう指示した[10]。長男エリアブは「戦いを見るために下ってきたのだ」と言ってダビデを非難した[11]

エッサイとイエス[編集]

新約聖書』「マタイ福音書」「ルカ福音書」には、イエス・キリストの両親の祖先にあたると記載される[12][13]

イザヤ書」にはエッサイの子孫から公平と義なる裁き主が誕生する事が預言されている[14]パウロはこの聖句をイエス・キリストに当てはめて引用している[15]。上述のように『新約聖書』ではエッサイをイエスの先祖のひとりに位置づけており、「マタイ福音書」「ルカ福音書」ではイエスはユダヤの町ベツレヘムにおいて聖母マリアから生まれたとされている[注釈 2]

また、正教会で歌われる降誕祭イルモスは、キリストを「イエッセイの根より生ぜし枝及び其(その)花[注釈 3]」と表現している。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 正教会祈祷文:一月六日ハリストス降誕祭前期より関連聖書箇所を引用…「主是くの如く言ふ、イエッセイの根より芽は出で、其根より枝は生ぜん。主の神は彼に止まらん。」(パレミヤイサイヤの預言書の読。十一章)。なお原文の祈祷書では「主の神」は「しゅのかみ」ではなく「しゅのしん」と仮名が振られ、「神゜」(振り仮名:しん)と記載されている。これは聖霊(聖神)を意味する。「〜超織と虔誠との神なり。」までの「神」は、同様に「神゜」(しん)。
  2. ^ しかし、『ヨハネによる福音書』にはベツレヘムにおける処女降誕に関する記載がなく、イエスはガリラヤナザレに生まれたと記されており、他の福音書でも、誕生物語以外の場面では、イエスに対し、一貫して「ナザレ人」「ナザレ出身者」の術語が用いられている。→ 記事「ナザレのイエス 」参照。
  3. ^ 正教会祈祷文:一月六日ハリストス降誕祭前期より該当箇所を引用:「イエッセイの根より生ぜし枝及び其花なる讃美たるハリストスよ、爾は童貞女より出で給へり。

出典[編集]

  1. ^ ルツ記」|4:17、4:22
  2. ^ サムエル記」上17:12-14
  3. ^ 「サムエル記」上16:1-3
  4. ^ 「サムエル記」上17:12
  5. ^ 「サムエル記」上16:6,7
  6. ^ 「サムエル記」上16:6-10
  7. ^ 「サムエル記」上16:11-13
  8. ^ 「サムエル記」上16:17-20
  9. ^ 「サムエル記」上16:21,22
  10. ^ 「サムエル記」上17:12-18
  11. ^ 「サムエル記」上17:28
  12. ^ マタイ」1:5、6
  13. ^ ルカ」3:32
  14. ^ 「イザヤ書」11:1-5、10
  15. ^ ローマ」15:12

関連項目[編集]