エアバスA320neo

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エアバスA320neo

IndiGoのA320neo

IndiGoのA320neo

エアバスA320neoNew Engine Option、ネオ)は、欧州エアバス社がA320ファミリーの最新シリーズとして、新型エンジンを搭載した単通路の近・中距離向けMoM旅客機である。このシリーズは基本型のA320neo、短胴型のA319neo、長胴型のA321neoがあり、A321neoには航続距離を増やしたLR(Long Range)型もある。従来型と比べて、燃費面で15%の低減、騒音面で50%の低減がされている[2]。エアバスグループの発表によるとA320neoとA321neoは、世界各国の航空会社70社から合計4,500機以上(2016年3月現在)の受注を獲得している。

概要[編集]

A320neoは、従来型より経済的な運用を計画してエンジンをさらなる高性能エンジンに変更したモデルで、2010年12月に計画がローンチされ、2014年9月に初飛行、2016年1月に商業飛行を始めた。従来のエンジンを搭載するモデルはneo(新エンジンのオプション)と区別するため新たにceo(Current Engine Option、セオ、現行エンジンのオプション)の名称が付加された。

neoで使用されるエンジンは、CFMインターナショナル社米国GE・アビエーションフランススネクマ合弁事業)のLEAP-1Aエンジン、または米国プラット・アンド・ホイットニー(P&W)社PW1100G-JM エンジンで、航空会社はどちらかを選択できる。なおPW1100G-JMのJは日本のJAEC(日本航空機エンジン協会)、MはドイツのMTU Aero Engines AGを意味し、3社で2011年9月に共同事業覚書に調印し、国際共同開発した(JAECは23%のシェアでファン、低圧圧縮機、低圧シャフトおよび燃焼器の一部を、MTU社は18%のシェアで低圧タービンと高圧圧縮機の一部を、P&W社はそれ以外の部位をそれぞれ担当)[3]。またLEAP-1Aでは炭化珪素繊維である日本カーボン製の「ニカロン」が採用されている[2]

長胴型A321および短胴型A319についても「新型エンジン搭載によるneo化新造機の量産」が行われる事になっていて、特に2014年頃から最も受注数が伸びているA321neoには燃料搭載量を増やし航続距離を4,000海里(7,400キロ)に増やしたLR(Long Range)型も開発することになっている。エアバスはこのA321LRにより、ボーイング757の「単通路機によるヨーロッパ各地から北アメリカ大陸への大西洋横断直行線」を代替可能だとしている[4]。2019年6月20日、パリ航空ショーにおいてA321neoLRの航続距離をさらに最大4,700海里(約8,700キロ)まで伸ばした「A321XLR」を発表。東京からシドニーを本機材でノンストップ飛行が可能になる。受領は2023年からを予定している[5][6]

エアバスでは、従来型エンジン搭載機と新型エンジン搭載機を並行生産するとしており、これは同様のエンジン置き換え計画であるワイドボディ機「A330neo」及び「A330ceo」の事例と同様である。また、中長期的な後継機として『エアバスNSR計画』がある。

現在のオペレーター[編集]

2022年4月8日現在[7]、◉は格安航空会社

受注運用状況[編集]

ルフトハンザドイツ航空のA320neo
全日本空輸のA320neo

2011年1月、インド最大の格安航空会社(LCC)IndiGoより150機、2011年のパリ航空ショーで、エアアジアグループから航空機生産業として史上最大規模の大型取引合意である合計200機の発注を受けた。これによってA320neoプロジェクトは損益分岐点への到達に大きく近づき、計画全体が軌道に乗った[8]ことでA320neo新造計画が本格的に始動した[9]。2011年には、それまでほとんどボーイング(吸収合併されたマクドネル・ダグラスを含む)一辺倒だったアメリカの大手航空会社アメリカン航空から計130機(その他に従来型エンジンのA320やブラジル製リージョナルジェットE-Jetシリーズも多数発注)のA320neo型機の発注を受けている[10][11]

2016年1月22日、A320neoの初号機(MSN6801)は当初予定されていたカタール航空が、PW1100G-JMエンジンの内部冷却によって始動に時間を要する件を理由に受領拒否したため[12]ルフトハンザドイツ航空が代わりに受領し欧州域内線などに投入した。また2016年3月にはIndiGoが、欧州以外のアジア地域に本拠地を置く航空会社として初のA320neoを受領した。今後は順次確定発注など契約の順番に従い、世界各地の航空会社にA320neoシリーズがデリバリーされることとなる。

就航当初は、2基のPW1100G-JMエンジンを始動するのに7分も掛かり、ルフトハンザのハブ空港であるフランクフルトでは運航上の混乱を招いた。このため出発時にはタキシイウエイ上ではなくゲートでエンジン始動完了を待つ必要があった。その後、PW1100G-JMエンジン搭載機の始動時間問題は対策がとられ、2016年前半にP&Wが始動に関係するソフトを改善させ20秒短縮、その後部品を改良して始動時間を5分40秒にまで縮めた。それから両エンジン停止時に同時に冷却する ”dual-cooling procedure”と呼ぶ方法を導入して始動時に掛かる時間を2分10秒まで短縮し、ルフトハンザが受領した5号機(D-AINE)には、コクピットの頭上パネル(overhead panel)に”dual- cooling switch”が取付けられている。パイロットは必要と判断した場合にはこのスイッチで ”dual-cooling” ができようになる。既に受領したエアライン各社はこの改修キットを受取り、次回整備等で改修ができるようになり、PW1100G-JMエンジン搭載の新造機では標準装備となった[13]

2018年2月、エアバス社はプラット・アンド・ホイットニー(P&W)社のエンジンを搭載して納入したA320neoのおよそ3分の1に欠陥が見つかり、最大級の顧客であるIndiGoへの納入を一時停止していることを明らかにした[14]。この問題に起因し、EASAは2月9日に2018-0041-E緊急耐空性改善通報を出していてこの通報で飛行中のエンジン停止(IFSD:in-flight shut-down)と離陸中止(RTO:Rejected Take-Off)の事案が報告されていて、洋上ETOPS運航の中止を指示し[15]、エアバスは予防的にこの問題に対処するためPW1100G-JMエンジンを搭載したA320neoシリーズの引渡を延期している。

日本では、全日本空輸がA320neoファミリー(A320neo及びA321neo)を計33機を発注し、次期主要小型機としてボーイング737-500型機の代替及び国内線及び近距離国際線の定期路線に投入するとしている。これが日本国内の航空会社として初めてのA320neoシリーズ発注となる。

2016年12月15日に初号機が受領され、17日に日本へ到着[16]。26日に羽田-関西線に就航し翌年1月23日からは初の近距離国際線として成田-上海線に就航した[17]

しかし、前述のPW1100G-JMエンジン始動トラブルにより、2017年以降ANAへのA320neoシリーズ引渡が遅延していて運航機材への影響も出ている。A321neoに至っては世界的にも引渡遅延している。

日本では他にも、Peach AviationがA320ceo 3機と共にA320neo 10機を発注している[18]

2024年3月31日現在[1]
受注 納入
合計 4,131 1,952 2,179
2018 2019 2020 2021 2022 2023 2024 合計
受注数 149 -295 -305 -84 330 402 10 4,131
引渡数 284 381 253 258 246 247 54 1,952
2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017
受注数 30 1,081 378 387 824 540 269 416
引渡数 68 161

事故・事件[編集]

2023年1月現在、エアバスA320neoファミリーにおいて発生した事故、事件は2件である。

2022年11月18日、LATAM チリが運航するA320-271Nがホルヘ・チャベス国際空港で離陸滑走中に消防車と衝突し炎上。消防車に乗車していた3人が死亡、搭乗していた乗客40人が負傷した。機体は全損扱いとなった。

関連項目[編集]

競合機

脚注[編集]

  1. ^ a b Airbus Orders&Deliveries”. Airbus S.A.S. (2024年3月31日). 2024年4月18日閲覧。
  2. ^ a b 月刊エアライン2016-03 新機ガイド2016
  3. ^ A320neo型機用エンジンPW1100G-JMの開発について - 公益財団法人 航空機国際共同開発促進基金ホームページ 技術資料提供 航空機等に関する解説概要 平成26年度 26-4
  4. ^ 最大離陸重量97トンのA321neoをローンチ
  5. ^ エアバス、パリ・エアショーで363機受注 A350の受注ゼロ
  6. ^ エアバス、超長距離型「A321XLR」ローンチ 単通路で世界最長、23年納入へ
  7. ^ https://www.planespotters.net/operators/Airbus/A320neo-Family
  8. ^ エアバス、インドのインディゴーから商用機市場最大の受注 - Reuters 2010.1.12
  9. ^ A320ファミリーに新エンジンを装備 2010年12月1日 2011年1月10日閲覧
  10. ^ アメリカン航空:過去最高の計460機、エアバスとボーイングに発注 - ブルームバーグ 2011年7月20日
  11. ^ アメリカン航空、A320ファミリーを260機購入 - エアバスジャパン 2011年7月20日
  12. ^ エアバスは書類上の問題とするが、海外メディアはエンジン始動後、3分間のアイドリングが必要になったためとする。出典:月刊エアライン 2016-03 p004
  13. ^ 素晴らしい運航実績のエアバスA320neo、しかしエンジン問題は残る
  14. ^ エアバス:プラット社製エンジン搭載のA320ネオ、30%に欠陥
  15. ^ 2018-0041-E : Engine – Operational Restrictions
  16. ^ ANA、日本初のA320neo「JA211A」を受領 12月17日に日本到着
  17. ^ ANAのA320neo、国際線に初就航 成田から上海へ
  18. ^ ピーチ、A320neoを10機発注 2019年から導入へ A320ceoも3機発注

外部リンク[編集]