イワタカンアオイ

イワタカンアオイ
愛知県豊橋市 2019年2月上旬 
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: コショウ目 Piperales
: ウマノスズクサ科 Aristolochiaceae
: カンアオイ属 Asarum
: イワタカンアオイ A. kurosawae
学名
Asarum kurosawae Sugim.[1]
シノニム
  • Heterotropa kurosawae (Sugim.) F.Maek. ex Y.Maek.[2]
和名
イワタカンアオイ(磐田寒葵)[3]

イワタカンアオイ(磐田寒葵、学名: Asarum kurosawae)は、ウマノスズクサ科カンアオイ属常緑多年草[3][4][5][6]

特徴[編集]

に長い葉柄があり、暗紫色になる。葉身は円形または卵形で、長さ、幅ともに5-7cmになり、先端は鋭頭から広円形、基部は深い心形になる。葉の表面は暗緑色で光沢がなく、短毛が散生し、雲紋状の白斑が入ることもある。葉は同属のヒメカンアオイに似るが、同種と本種では開花時期が異なる[3][4][6]

は10-11月に咲き始め[4][6]、翌年3-5月まで見られることもある[3]。花は緑紫色である場合が多く、花弁は無く、裂片が花弁状になる。萼筒は丸みのある鐘形または円筒形で、長さ12-14mm、径12-14mmになる。萼筒の入口は口環の発達が弱いため広くなる。萼筒内壁には弱い網状隆起があり、約30個の縦脈と約10個の横脈があって網目状になるが、同属他種と比べて隆起が弱いためあまり目立たない。その表面には多細胞の微毛が密生する。萼裂片は卵状三角形で、長さ10-12mm、萼筒より短く、斜めに開き、表面には萼筒内壁の微毛と同様な毛が連続して生える。雄蕊は12個あり、花糸は葯より長い。花柱は6個あり、先は角状となって直立して萼筒の入口まで達する[3][4][6]

分布と生育環境[編集]

日本固有種[5]。本州の東海地方に固有で、静岡県磐田市付近および静岡県と愛知県の県境付近に分布し、低地から低山地の広葉樹林の湿った林床に生育する[4][6]

名前の由来[編集]

種小名(種形容語) kurosawae は、この種の発見者で、静岡県の植物研究者である黒沢美房への献名である[7]

分類[編集]

静岡県の高校教師で、植物研究者である黒沢美房は、1965年に静岡県磐田市の林下でカンアオイに似た植物を採集し、杉本順一に生苗株を提供した。杉本はこの種について、萼片に細毛があること、萼筒内面の網目突起が著しく細密であることなどから、1968年、この種を新種として、『北陸の植物』The journal of geobotany、Vol.16, No.2 に記載発表した[7]

種の保全状況評価[編集]

絶滅危惧II類 (VU)環境省レッドリスト

(2017年、環境省。2000年レッドデータブックまでは、絶滅危惧IB類(EN)。)

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ イワタカンアオイ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. ^ イワタカンアオイ(シノニム) 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  3. ^ a b c d e 『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』p.29
  4. ^ a b c d e 『改訂新版 日本の野生植物 1』p.69
  5. ^ a b 『日本の固有植物』pp.60-62
  6. ^ a b c d e 『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプタンツ(増補改訂新版)』p.379
  7. ^ a b 『北陸の植物』The journal of geobotany、Vol.16, No.2, pp.46-51

参考文献[編集]

  • 杉本順一「日本植物雑記(一)」『北陸の植物』The journal of geobotany、Vol.16, No.2, pp.46-51、1968年、北陸の植物の会
  • 加藤雅啓・海老原淳編著『日本の固有植物』、2011年、東海大学出版会
  • 門田裕一監修、永田芳男写真、畔上能力編『山溪ハンディ図鑑2 山に咲く花(増補改訂新版)』、2013年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 1』2015年、平凡社
  • 矢原徹一他監修『絶滅危惧植物図鑑 レッドデータプタンツ(増補改訂新版)』、2015年、山と溪谷社
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名-学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム