イギリス陸軍の編成

イギリス陸軍の編成(イギリスりくぐんのへんせい)では、イギリス陸軍の編成について触れる。

作戦機関[編集]

陸軍司令部[編集]

ハンプシャー州アンドーヴァーマールボロ宿営地英語版に所在するイギリス陸軍の最上級作戦司令部[1]。旧称地上部隊司令部(英語: Headquarters Land Forces)。

2011年に改編され、それまでの陸軍総司令官英語版指揮から、陸軍参謀総長指揮に変更されている[2]

野戦軍[編集]

イギリス陸軍の定義で言う「配備可能な」部隊、つまり再編成なしで即座に実戦投入可能な部隊は基本的に野戦軍に所属する。

野戦軍はウィルトシャートレンチャード宿営地英語版に司令部を置き、平時および有事に備えた部隊編成等を担当する[3]

2021年3月に公表された「フューチャーソルジャー英語版」に基づく再編計画が進行中で、2025年の完了を予定している[4][5]

以下は、「フューチャーソルジャー」計画に基づく編制[6]

地域軍(Regional Forces)[編集]

諸外国の予備役の一種にあたる非常勤の国防義勇軍を中心として、相対的に非戦闘的な部隊は地域軍に所属する。

  • 地域軍本部
    • 第2師団(スコットランド・北アイルランド・北イングランドを担当)
      • 第15旅団(北東イングランド担当)
      • 北アイルランド司令部兼第38旅団(北アイルランドにおける治安作戦(オペレーション・バナー)終結にともない大幅に縮小の上、北アイランド司令部と統合された。三軍合同部隊ではあるが陸軍単独の指揮下にある)
      • 第42旅団(北西イングランド担当)
      • 第51旅団(スコットランド担当)
    • 第4師団(南イングランド担当)
    • 第5師団(中部イングランド・ウェールズ担当)
    • ロンドン管区(大ロンドンおよびロンドンにおける儀仗任務担当)
    • 駐独英軍支援部隊(ドイツ駐留の陸海空軍部隊の支援、ドイツ政府・地元自治体等への連絡と協力)
    • 陸軍訓練募兵師団(各種訓練募兵組織の統括・支援)

統合ヘリコプターコマンド(Joint Helicopter Command)[編集]

兵科[編集]

イギリス陸軍は、騎兵歩兵砲兵等の兵科によって構成される。以下はその概略である。

騎兵[編集]

騎兵は、王室騎兵隊(Household Cavalry)に所属する近衛騎兵連隊及び王立装甲軍団(Royal Armoured Corps)に所属する重騎兵連隊・軽騎兵連隊・王立戦車連隊によって構成される。兵科の名称自体は騎兵となっているが、これは歴史的呼称を現代に引き継いでいるだけであり、重騎兵・軽騎兵といった区分を含めて実際上の意味はほとんどない。後述の近衛騎兵を除いては実際に乗馬を任務とすることはなく、戦車・装甲偵察・NBC防護及びそれらの訓練を任務としている。

イギリス陸軍の騎兵連隊本部、4個程度の戦闘中隊及び各種支援部隊で構成されており、実質的には大隊編制である。

近衛騎兵連隊に関してはやや特殊な編制を採っており、王室騎兵隊に所属する管理上の2個連隊であるライフガーズ(Life Guard)とブルーズ・アンド・ロイヤルズから、各々2個中隊を抽出して計4個中隊で構成する王室騎兵連隊(戦闘部隊)と、各1個中隊を抽出して計2個中隊で構成する王室騎兵乗馬連隊(儀仗部隊)を再構成することとなっている。

わざわざ2個連隊から2個連隊を再構成せず、最初から1個連隊を儀仗任務にあて、残る1個連隊を戦闘任務に充てた方が管理効率の観点からは明らかに効率的ではあるが、そうした場合どちらかの連隊の儀仗兵としての伝統が失われてしまうため、それを回避するため、このようなやや複雑な編制となっている。またこのことには女王エリザベス2世本人の直接の意向があったと言われている。

なお、王室騎兵隊は格式の上では王立装甲軍団と同格であるため、ライフガーズ連隊とブルーズ・アンド・ロイヤルズ連隊は形式上は王立装甲軍団には所属しないこととなっている。ただし実質的には一まとめのものとして扱われており、そのため通常は王室騎兵隊および王立装甲軍団という形で併記される。またこの際は必ず王室騎兵隊が王立装甲軍団よりも先に記述されることとなっている。

現在の編制[編集]

歩兵[編集]

湾岸戦争時、塹壕で訓練中のスタッフォードシャー連隊第1大隊C中隊(第1装甲師団)の兵士たち

歩兵は、近衛師団(Guard Division)に所属する近衛歩兵(Foot Guard)と、キングス師団(King's Dvision)・スコットランド師団(Scottish Division)・プリンス・オブ・ウェールズ師団(Prince of Wales' Division)・クィーンズ師団(Queen's Division)・軽歩兵師団(Light Division)に所属する戦列歩兵(Line Infantry)、およびそのいずれにも所属しない特殊部隊・治安部隊などから構成されている。なお、ここでいう師団は主に新兵の募集や基礎訓練等に責任を負う管理組織であって、戦闘組織としての師団とはまったくことなることに注意する必要がある。

イギリス陸軍の歩兵連隊は、特殊部隊を除いては連隊本部及び1個から最大5個(非現役部隊を含めれば7個)の歩兵大隊によって構成される。特殊部隊以外の歩兵連隊は完全な管理部隊で戦闘の指揮をおこなわない。そのため歩兵大隊が旅団に組み込まれる場合は、連隊ではなく旅団の指揮を受けることとなる。

なお、近衛歩兵の5個連隊に関してはすべて連隊のもとに1個大隊のみを置く編制だが、グレナディアガーズ(Grenadier Guards)・コールドストリームガーズ(Coldstream Guards)・スコッツガーズ(Scots Guards)の3個連隊に関してはこのほかに増強近衛中隊(Guards Incremental Companies)という通年で儀仗任務をおこなう中隊を各1個中隊保有している。

イギリス陸軍の近衛歩兵と戦列歩兵はアームズ・プロット・システム(Arms Plot System)という独特の制度を採用しており、各大隊(連隊ではない)は、装甲歩兵(ウォーリア歩兵戦闘車を使用)・機械化歩兵サクソン装甲兵員輸送車を使用)・軽歩兵・空中強襲・パブリックデューティー(ロンドンにおける儀仗任務)の各任務を2年から6年の期間でローテーションすることとなっている。この制度は非効率であるためか、現在進行中の2008年を目処とする陸軍の再編成が完了した後は制度自体が廃止され、各大隊はローテーションされない一貫した任務に就くこととなっている。

現在の編制[編集]

イギリス歩兵連隊の募兵地域区分。

砲兵[編集]

砲兵は、王立砲兵連隊(Royal Artillery Regiment)に所属する王立騎馬砲兵(Royal Horse Artillery)の各連隊、および第x王立砲兵連隊と番号を付して呼ばれるその他の砲兵連隊によって構成される。王立砲兵連隊は現役連隊のみでも16個連隊、非現役部隊を含めれば22個連隊もの部隊を抱える軍団規模の組織であるにもかかわらず、その名称は現在に至るまで相変わらず「連隊」のままである。

イギリスの砲兵連隊は、本部並びに3個から4個の射撃中隊及び各種支援部隊から構成されており、歩兵連隊のような大隊組織を持たない。そのためその名称は連隊ではあるが、実質的には大隊規模の組織である。

各連隊は、本土防衛・防空・全般支援(MLRSを使用)・近接支援(AS90/155mm自走砲を使用)・近接支援(L118/105mm軽榴弾砲を使用)・観測および目標捕捉・訓練の各任務に当たっている。各連隊の任務は歩兵大隊とは異なり、固定されている。

なお、王立騎馬砲兵・国王中隊(King's Troop Royal Horse Artillery)は有事の際「本土防衛」任務に就くが、平時はほぼ完全な儀仗部隊であり、式典などでQF 13ポンド砲(完全に式典用の砲であり、現代戦における兵器としての価値はまったくない)を礼砲として撃つこと及び国葬の際棺を載せた台車を牽くこと任務としている。また、何らかの理由で前述の王室騎兵乗馬連隊がロンドンに不在の場合、その交代部隊として騎兵として儀仗任務に就くこともある。

現在の編制[編集]

工兵[編集]

通信[編集]

陸軍航空[編集]

牧師[編集]

兵站[編集]

医療[編集]

陸軍医療部(Army Medical Services

電子・機械技術[編集]

人事給与・訓練教育・法務・憲兵[編集]

情報[編集]

軍楽隊[編集]

国防義勇軍[編集]

国防義勇軍(Territorial Army(TA))(予備役部隊)

脚注[編集]

  1. ^ New Army's HQ Land Forces base is opened in Andover”. BBC (2010年9月9日). 2023年4月7日閲覧。
  2. ^ Army Command reorganization”. Defence Marketing Intelligence. 2011年11月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2023年4月7日閲覧。
  3. ^ FIELD ARMY”. British Army. 2023年9月28日閲覧。
  4. ^ Integrated Review: Defence Command Paper, Volume 691: debated on Monday 22 March 2021”. 2021年3月23日閲覧。
  5. ^ “Future Soldier: What is the British Army being promised as part of modernisation plans?”. BFBS. (2021年11月26日). https://www.forces.net/news/future-soldier-what-british-army-being-promised-part-modernisation-plans 2021年11月25日閲覧。 
  6. ^ Field Army” (英語). www.army.mod.uk. 2021年11月25日閲覧。

外部リンク[編集]