アンシェ・ヤケレン

アンシェ・ヤケレン
ウプサラ大監督英語版
スウェーデン首席大監督
アンシェ・ヤケレン(2013年)
教会 スウェーデン国教会
大主教区 ウプサラ
選出 2013年10月15日
着座 2014年6月15日
前任 アンデシュ・ウェイリッド英語版
聖職
叙階/叙聖 1980年
司教/主教 2007年4月15日
個人情報
本名 アンシェ・ツェルナー
出生 (1955-06-04) 1955年6月4日(68歳)
西ドイツの旗 西ドイツ
ノルトライン=ヴェストファーレン州
ヘルデッケ英語版
国籍
教派・教会名 ルター派
配偶者
ハインツ・ヤケレン (m. 1979)
前の役職 ルンド監督英語版(2007年–2014年)
出身校
座右の銘 Gud är större(神は偉大である) [1][2]
紋章 アンシェ・ヤケレンの紋章
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アンシェ・ヤケレンスウェーデン語: Antje Jackelén[注釈 1]1955年6月4日 - )は、スウェーデン聖職者ルター派に属し、ウプサラ大監督英語版およびのスウェーデン国教会首席大監督[3]同輩中の首席英語版)を務める。2013年10月15日に第70代ウプサラ大監督に選出され、2014年6月15日ウプサラ大聖堂において正式に礼拝を受け、着座した。12世紀以来スウェーデンでは初の外国出身大監督であり、初の女性大監督でもある[4][5]

ヤケレンは1980年にスウェーデン国教会の牧師に任命され、1999年にはルンド大学神学博士号を取得した。2007年から2014年まではルンド監督英語版を務めていた。

経歴[編集]

ヤケレンは1955年6月4日に、西ドイツヘルデッケ英語版で生まれた。彼女はドイツのテュービンゲン大学やスウェーデンのウプサラ大学でルター派神学を学んでいる。1980年聖職叙階[3]

1981年から1988年までティーレソー小教区ストックホルム監督管区英語版)で、1988年から1994年までゴードストンガ小教区(ルンド監督管区)で、1995年から1996年までルンド大聖堂で牧師を務めた。神学博士号取得後は、1999年から2001年までルンド大学で勤務し、2001年から2003年まではシカゴ・ルーテル神学校英語版にて体系的神学・宗教学および科学分野の助教授を務めた。2003年からは准教授に昇進し、2007年までジゴン宗教・科学センター英語版の理事もこなしている。

ヤケレンは2006年ルンド監督英語版に選出され、翌年正式にクリスティーナ・オーデンバリ英語版の後継として着任した。オーデンバリとは異なり、ヤケレンは自らの着任を認めなかった牧師たちに対し、彼女が執り行う聖餐への出席を義務付けた。なお、オーデンバリはスウェーデン国教会における初の女性監督であり、ヤケレンは3人目に当たる。また、彼女は監督管区選出としては初の女性監督である。前任のオーデンバリ(1997年着任)や、元ストックホルム監督のキャロライン・クルーク英語版1998年着任)は、2000年にスウェーデン国教会が国家から分離する前の選出であるため、この2人はスウェーデン政府によって任命された女性監督となる。2007年4月15日ウプサラ大監督英語版アンデシュ・ウェイリッド英語版によって、ウプサラ大聖堂にてヤケレンはルンド監督に任命された。4月21日に行われたルンド大聖堂英語版での礼拝を経て、監督管区に迎え入れられた。彼女は公式な座右の銘としてGud är större(神は偉大である)を選んだが、これは新約聖書における『ヨハネの第一の手紙』の一節(3:18–20)を参考にしたものである。この一文は、2011年に彼女が出版した教書の題名にもなっている。

ルンド監督として、ヤケレンは2010年ヴェステルイェートランド公爵夫人ヴィクトリア王太子ヴェステルイェートランド公爵ダニエル王子ロイヤル・ウェディング英語版司式者英語版補佐を務めた[6]

彼女はまた、ルター派世界連盟におけるスウェーデン国教会代表も務めていた。

左からストレングネース監督英語版ヨハン・ダルマン英語版、ウプサラ大監督アンシェ・ヤケレン、ヴェステロース監督英語版ミカエル・モグレン英語版2015年9月6日

2013年10月15日にヤケレンはウプサラ大監督に選出された。2014年6月15日、スウェーデン国王カール16世グスタフと王妃シルヴィアの御前において、前任のウェイリッドから正式に大監督が引き継がれた[7]。その年の3月、ヨハン・ツーベリ英語版が彼女の後任としてルンド監督に選出された。

2015年5月4日の月曜日、ヤケレンとローマ教皇フランシスコローマで公式会見を行った[8]。これにより、彼女はヴァチカンに歓迎された初の女性かつ大監督となった[9]彼女の教会教皇の教会には非常に重要な違い(叙階や聖職者の立場、マリア神学や現代の諸課題に対する考え方など)があるものの、この会見でプロテスタント改革記念日に対する神学的対話や会派尊重の推進などを盛り込んだ文書の発表に至った。彼女はとりわけ進化や気候問題、科学と宗教間における対話、貧困層のケアや公的生活における教会の継続的な役割支持の必要性について、いくつかの取り決めを持った[10]

2016年10月から11月にかけ、宗教改革500周年記念を迎えて教皇がスウェーデンを訪問したが、その際再びヤケレンと面会している[11]

出版物[編集]

彼女の博士論文である「Zeit und Ewigkeit: die Frage der Zeit in Kirche, Naturwissenschaft und Theologie(時間と永遠:教会における時間の問題, 自然科学と神学)」(ルンド、1999)は、2002年に同じ題名でノイキルヒェナー出版社から刊行された。スウェーデン語への翻訳は2000年に行われており、英訳版は『Time & eternity: the question of time in church, science, and theology』として2005年に出版された。2003年に開かれた、宗教学および科学分野における著名な学者を特集したゴーシェン会議において、ヤケレンは講演を行っている。この時の議事録はパンドラ出版によって刊行された。

私生活[編集]

アンシェ・ヤケレンとハインツ・ヤケレン(2010年に行われた、ヴェステルイェートランド公爵夫人ヴィクトリア王太子ヴェステルイェートランド公爵ダニエル王子のロイヤル・ウェディングにて)

アンシェ・ヤケレンの夫であるハインツ・ヤケレンも彼女と同じくドイツ出身の元聖職者であり、かつては牧師を務めていた。二人の間には娘が二人おり、孫も数人いる。二人はウプサラ大学神学部の学部生時代に出会っており、1979年に結婚した。現在はウプサラにある大監督官邸英語版で暮らしている[4]

神学的信条[編集]

ヤケレンは、自然科学と宗教信仰の相互関係や、現代社会における宗教の役割について取り上げたいくつかの研究を発表している。また、彼女は進化論を支持しており、神と進化の両方を信じることに矛盾を見出さない立場にある[12][13][14][15][16]

スウェーデンのキリスト教系新聞ダゲン英語版におけるインタビューにて、ヤケレンは聖母マリアによる処女懐胎について「独特さを説明するための神話学上の言葉です。処女懐胎を生物学上の問題として解釈する人は、その前提を完全に見落としています。」とする解釈を示した[17]。彼女は後に、処女懐胎をありのまま厳密に解釈することも、科学的不可能性を根拠とする処女懐胎の否定も、処女懐胎を取り巻く神学的伝統を理解することができないとして、自己の考えが意図するところを強調している[18]

彼女はまた、教会における同性結婚を支持しており、スウェーデン政府に対しても同性結婚の容認を求めている[19]

政治的信条[編集]

ヤケレンはスウェーデンの市民社会国教会が果たす役割を強調し、公立学校での宗教的影響の排除は子供達の霊的発達英語版を阻害する悪手であるとの信念から、教会における卒業式の挙行禁止に反対している[20]。また、国教会の監督会議と協同して気候変動問題に言及し、温室効果ガスの削減目標を設定するよう国教会や政府関係者に呼びかけている[21]

栄典[編集]

2017年6月、ヤケレンの対話や協調に基づく人間的、神学的、社会的問題への世界教会主義による取り組みが評価され、イギリス国教会カンタベリー大主教よりランベス十字エキュメニズム章英語版が贈られた[22]

注釈[編集]

脚注[編集]

  1. ^ 1 John 3.18–20
  2. ^ Church of Sweden: Bishop Antje Jackelén's motto – God is greater Archived 13 March 2014 at the Wayback Machine.
  3. ^ a b スウェーデン教会に史上初の女性首席大監督”. Christian Today (2013年10月22日). 2019年1月2日閲覧。
  4. ^ a b Svenska Dagbladet :Klimatet är en högst teologisk fråga. 15 June 2014.
  5. ^ Fox News/Associated Press: Sweden elects its first female archbishop, the German-born bishop of Lund
  6. ^ Officiating clergymen appointed for wedding between Crown Princess Victoria and Mr Daniel Westling”. Swedish Royal House. 2019年1月2日閲覧。
  7. ^ The King and Queen and The Crown Princess attend the archiepiscopal ordination of Antje Jackelén”. Swedish Royal House. 2019年1月2日閲覧。
  8. ^ “Ärkebiskopen mötte påven” (Swedish). Uppsala nya tidning. (2015年5月4日). http://www.unt.se/nyheter/omvarld/arkebiskopen-motte-paven-3713043.aspx 2017年11月3日閲覧。 
  9. ^ Vatican: Pope Francis meets with female Archbishop”. Pulse.ng (2015年). 2015年5月8日閲覧。
  10. ^ http://www.microsofttranslator.com/bv.aspx?from=&to=en&a=http%3A%2F%2Fpress.vatican.va%2Fcontent%2Fsalastampa%2Fen%2Fbollettino%2Fpubblico%2F2015%2F05%2F04%2F0333%2F00729.html
  11. ^ Odd Clausen (2016年11月1日). “Påvens besök fortsätter med mässa” (Swedish). Sveriges radio. 2017年11月3日閲覧。
  12. ^ Antje Jackelen elected Sweden's first woman archbishop 15.10.2013 BBC News
  13. ^ Sweden elects first female archbishop Archived October 19, 2013, at the Wayback Machine. 15.10.2013 The Local
  14. ^ Antje Jackelen is Sweden’s first female Archbishop 16.10.2013 CERF Institute
  15. ^ Sweden Follows Suit, Elects Jackelen As First Female Archbishop 18.10.2013 World Religion News
  16. ^ Church of Sweden chooses first female archbishop 17.10.2013 Ecumenical News
  17. ^ Antje Jackelén becomes Sweden's first female archbishop after historic Church election 16.10.2013 Radio Sweden
  18. ^ Jackelén, A. Svenska Dagbladet. Jesustron ska inte reduceras till biologi 23 October 2013
  19. ^ Jackelén, A. Svenska Dagbladet. Äktenskapet inte sämre för att fler inkluderas July 28, 2009
  20. ^ Svenska Dagbladet: Unga får signalen att kyrkan kan vara farlig. December 2, 2012.
  21. ^ Church of Sweden: : A Bishops’ letter about the climate (pdf)[リンク切れ]
  22. ^ The Archbishop of Canterbury’s Awards: Citations in Alphabetical Order” (pdf). Archbishop of Canterbury (2017年6月9日). 2017年6月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月14日閲覧。

外部リンク[編集]

宗教の称号
先代
クリスティーナ・オーデンバリ英語版
ルンド監督英語版
2007年–2014年
次代
ヨハン・ツーベリ英語版
先代
アンデシュ・ウェイリッド英語版
ウプサラ大監督英語版
スウェーデン首席大監督

2014年–
現職