アミカ (昆虫)

アミカ科
Blepharicera fasciata
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: ハエ目(双翅目) Diptera
亜目 : カ亜目(長角亜目、糸角亜目) Nematocera
下目 : アミカ下目 Blephariceromorpha
: アミカ科 Blephariceridae
Schine, 1862
和名
アミカ科
英名
Net-winged midges
亜科

アミカ(網蚊、Blephariceridae)は、ハエ目(双翅目)糸角亜目アミカ科に属する昆虫の総称である。世界で約30属300種ほどが記載されている。

概要[編集]

幼虫の腹側

成虫はのような外見。主に渓流で見られ、渓流の濡れた岩の上に産卵する[1]

幼虫と蛹は水中で生活し、水底の岩やの壁面にはりついている。幼虫の体節は7で、第1節は頭部と胸部、第1腹節が融合したもので、第7節は第7-9腹節が融合したものである[1]。各節の背面には棘や疣があるものが多い[1]。触角は0-3節。第1腹節か第6腹節に強力な吸盤を持っており、これによって渓流の岩や滝の壁面にしっかりと吸着している[1]。主に微細藻類を捕食している。

種によって生活史が異なり、クロバアミカなど9月に孵化して4-5月に羽化する種(冬型第1亜型)や、ヤマトコマドアミカなど12月に孵化して4-5月に4令幼虫となっている種(冬型第2亜型)、カニギンモンアミカなど5-7月に孵化して、8月頃に羽化する種(夏型第1亜型)、ユミアシヒメフタマタアミカなど春に孵化して夏季に幼虫、成虫が共にみられる種(夏型第2亜型)、ヤマトクチナガアミカのように1年を通して幼虫、蛹がみられる種(周年型)がある[2]

分類[編集]

BioLib.cz[3]に従えば、現生種は2亜科に分類される。かつて独立の亜科とされていたツマグロアミカ亜科 Apistomyiinae はクチナガアミカ族 Apistomyiini に、Paltostomatinae (「カニアミカ亜科」の和名もあるが[4]カニアミカ属=ギンモンアミカ属は含まれない)はPaltostomatini として、亜科より低い族(Tribe)のランクでアミカ亜科に含まれている。また化石の数属は所属の亜科が未確定である。これら化石のうち、内モンゴルから報告された中生代の Brianina longitibialisMegathon brodskyi が2006年までのアミカ類の最古記録とされている[5]

属・種数・分布[編集]

*各属の分布域とおよその種数はCourtney (2001)[6]に従ったため、原則として2001年以降のデータは反映されていない。

アミカ科 Family Blephariceridae

Subfamily Edwardsininae
アミカ亜科 Subfamily Blepharicerinae
  • クチナガアミカ族 Tribe Apistomyiini (古くは独立のツマグロアミカ亜科 Apistomyiinae としても扱われた)
  • Apistomyia Bigot, 1862 クチナガアミカ属(ツマグロアミカ属) (16種) 地中海地域、日本東南アジア、豪州
  • Austrocurupira Dumbleton, 1963 (1種) 豪州東南部
  • Curupirina Stuckenberg, 1970 (3種) ニューカレドニア
  • Neocurupira Lamb, 1913 (5種) ニュージーランド
  • Nesocurupira Stuckenberg, 1970 (1種) ニューカレドニア
  • Nothohoraia Craig, 1969 (1種) ニュージーランド
  • Hammatorhina Loew, 1869 (2種) スリランカ
  • Horaia Tonnoir, 1930 (3種) 南アジア、東南アジア
  • Peritheates Lamb, 1913 (2種) ニュージーランド
  • Parapistomyia Zwick, 1977 (4種) ニューギニア、豪州南東部
  • Theischingeria Zwick, 1999 (1種) 豪州北東部
  • アミカ族 Tribe Blepharicerini
  • Agathon Roder, 1890 コマドアミカ属(ヤマトアミカ属) (16種) 中央アジア-東アジア北米西部
  • Asioreas Brodsky, 1972 (5種) 中央アジア
  • Bibiocephala Osten Sacken, 1874 クロバアミカ属 (4種) 日本、北米西部
  • Blepharicera Macquart, 1843 ナミアミカ属(ニホンアミカ属) (約44種) ユーラシア〜北米
  • Dioptopsis Enderlein, 1937 (3種) 欧州
  • Liponeura Loew, 1844 (45種) 欧州
  • Hapalothrix Loew, 1876 (1種) 欧州
  • Neohapalothrix Kitakami, 1938 ギンモンアミカ属(カニアミカ属)(3種) 東アジア
  • Philorus Kellogg, 1903 フタマタアミカ属(ヒメアミカ属) (22種) 中央アジア〜東アジア、北米西部
  • Tianschanella Brodsky, 1930 (1種) 中央アジア
  • Tribe Paltostomatini (亜科のランクとする場合は「カニアミカ亜科」[4]の和名もあるがカニアミカ属=ギンモンアミカ属は含まれないので注意)
所属亜科不明(化石属)
  • Blephadejura Lukashevich, Huang & Lin, 2006
  • Brianina Zhang & Lukashevich, 2007
  • Megathon Lukashevich & Scherbakov, 1997
  • Paltostomopsis Cockerell, 1915
  • Philorites Cockerell, 1908

日本のアミカ科[編集]

岡崎(2005)[4]および三枝(2008)[7]によれば、既知の日本産アミカ科は以下の6属27種で、他に若干の未報告種、未記載種があるとされる。幼虫検索表と図は岡崎(2005)に、成虫の検索表と写真は三枝(2008)に掲載されている。三枝(2008)によってそれまでの属和名および種和名の大部分が改称された。

下記が日本産のアミカ科のリストである。和名は三枝(2008)に従っているが、それ以前の和名も括弧内に別名として付記されている。また分布の一部は略号(北=北海道、本=本州、四=四国、九=九州)で示されている。

アミカ科 Blephariceridae
アミカ亜科 Blepharicerinae
クチナガアミカ族 Apistomyiini
アミカ族 Blepharicerini

出典[編集]

  1. ^ a b c d 津田編(1962)p.180
  2. ^ 津田編(1962)p.180-181
  3. ^ BioLib.cz -- family Blephariceridae Schiner, 1862 (2011年2月6日閲覧)
  4. ^ a b c 岡崎克則(2005) アミカ科 Blephariceridae (p.717-736).in 川合禎次・谷田一三(編著)『日本産水生昆虫-科・属・種への検索』 東海大学出版会 ISBN 448601572X
  5. ^ Zhang, J. & Lukashevich, E.D. (2007): "The oldest known net-winged midges (Insecta: Diptera: Blephariceridae) from the late Mesozoic of northeast China". Cretaceous research, 28(2): 302-309. doi:10.1016/j.cretres.2006.05.012
  6. ^ Gregory W. Courtney (2001) Blephariceridae: Classification and Distribution -- Iowa State University (2011年2月6日閲覧)
  7. ^ 三枝豊平(2008) アミカ科 (p.376-385、図版129-130) in 平嶋義宏・森本桂(監修) 『新訂原色昆虫大図鑑 第III巻』 北隆館 ISBN 978-4-8326-0827-6
  8. ^ Peter Zwick (1997) "Synonymies in the genus Neohapalothrix (Diptera: Blephariceridae)" Aquatic Insects Vol. 19, Issue 1: pp. 9-13. doi:10.1080/01650429709361630 <[1]>

参考文献[編集]

外部リンク[編集]

関連項目[編集]

  • 北上四郎 - 日本のアミカ研究家。アミカの幼虫を日本で初めて発見。