アインシュタインの十字架

アインシュタインの十字架
Einstein Cross
ハッブル宇宙望遠鏡の画像。
仮符号・別名 QSO 2237+0305
星座 ペガスス座
見かけの等級 (mv) 16.78[1]
分類 クエーサー[1]
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  22h 40m 30.3s[1]
赤緯 (Dec, δ) +03° 21′ 30″[1]
赤方偏移 1.695[1]
視線速度 (Rv) 227230 km/s[1]
距離 80億光年[2]
物理的性質
色指数 (B-V) -2.42[1]
他のカタログでの名称
QSO 2237+030、
QSO 2237+0305、
QSO B2237+030、
QSO B2237+0305、
QSO J2240+0321
Template (ノート 解説) ■Project
ハクラのレンズ
Huchra's lens
仮符号・別名 LEDA 69457
視直径 1.6 × 1.6
分類 Sab D型銀河
位置
元期:J2000.0
赤経 (RA, α)  22h 40m 30.23s[3]
赤緯 (Dec, δ) +03° 21′ 31.3″[3]
赤方偏移 0.0394[3]
視線速度 (Rv) 11579 km/s[3]
距離 4億 光年[2]
他のカタログでの名称
AGC 320302、
BWSH C、
LEDA 69457、
Huchra's lens、
NPM1G +03.0590[3]
UZC J224030.2+032131[3]
Z 378-15、
Z 2237.9+0305、
ZW 2237+030、
Zwicky galaxy 2237+030[4]
QSO 2237+0305 G
Template (ノート 解説) ■Project

アインシュタインの十字架[5](アインシュタインのじゅうじか、Einstein Cross[1])は、銀河LEDA 69457[3]重力レンズで4個に分裂して見えるクエーサーである[1]アインシュタインクロスとも訳す[6]。これらはLEDA 69457自身を含めた名称とすることもある。クエーサーとしての符号はQSO 2237+0305[1]あるいはQSO 2237+030[1]、重力レンズ系としての符号はG2237+0305

1984年、ジョン・ハクラにより、クエーサーと重力レンズ効果が発見され、1985年に発表された[4](LEDA 69457自体は単なる銀河としてはすでに知られていた)。1987年、H・K・C・イーにより4つの像が確認され、1988年に発表された[4]

銀河[編集]

LEDA 69457、ハクラのレンズ(Huchra's lens)[3]とも呼ばれる、Sab D型の楕円銀河である。固有名は、この銀河の重力レンズを発見したジョン・ハクラに因む。地球から4億光年離れた位置にある[2]。銀河の視直径は1.6×1.6である。後述するクエーサーQSO 2237+0305が受けている重力レンズ効果の原因となっている重力源であり、この度合いからLEDA 69457の質量を求める試みがある[2]

クエーサー[編集]

QSO 2237+0305(あるいは QSO 2237+030)は、LEDA 69457の後ろに存在するクエーサーである。地球から80億光年離れた位置にあり、LEDA 69457とは20倍もの開きがある。QSO 2237+0305は、LEDA 69457の重力によって4個の像に分裂して見え、0.87×0.34の領域に広がっている。像はそれぞれLEDA 69457を基準に、南はA、北はB、東はC、西はDと名づけられている[4][注釈 1][注釈 2](何のAかが必要な時は、連星のように「QSO 2237+0305A」等と記される)。さらに実際には、LEDA 69457に重なる位置に微弱な5個目の像、すなわちQSO 2237+0305の本体があると予想されており、観測可能かもしれない[2]

名称[編集]

アインシュタインの十字架という名称は、理論物理学者アルベルト・アインシュタインに因む。アインシュタインは、1915年から1916年に発表した一般相対性理論において、重い物体によって発生した重力によって時空歪み、その歪んだ時空に沿ってが曲がって進むことが提唱された。もし観測者と観測対象の間に別の天体があった場合、観測対象から放たれた別々の光を、天体の重力が凸レンズの役割を果たして一点に集める事になる。このとき、別々の光を見るため、あたかも観測対象が分裂して見える。これを重力レンズ効果と呼ぶ。重力レンズ効果は1936年にアインシュタイン自身が論文中に述べ、実例は1979年に発見された。アインシュタインの十字架は1985年に発見されたが、4個の像は、その1年前に発見された四つ葉のクローバークエーサーが最初である。ただし、四つ葉のクローバークエーサーは中心部が良く見えないため、十字架には見えない。

関連項目[編集]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ SIMBADでは「[Y88] A」等と表示されるが、「[Y88]」は「Yeeが1988年に使った名称」を意味する便宜上の表示であり、名称の一部ではない。
  2. ^ 天球座標系なので、北を上とすると東は左

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k QSO J2240+0321 - SIMBAD
  2. ^ a b c d e First ESA Faint Object Camera Science Images the Gravitational Lens G2237 + 0305 - HubbleSite
  3. ^ a b c d e f g h [Y88] G - SIMBAD
  4. ^ a b c d YEE H.K.C., Astron. J., 95, 1331-1339 (1988), High-resolution imaging of the gravitational lens system candidate 2237+030
  5. ^ 学術俯瞰講義 2. 物質の生い立ち ―素粒子、原子、宇宙 ―24頁 ビッグバン宇宙国際研究センター 佐藤勝彦
  6. ^ 『大宇宙SCALE』誠文堂新光社 117P ISBN 978-4-416-20928-8

座標: 星図 22h 40m 30.3s, +03° 21′ 30″