もち米

蒸したもち米で餅をつく

もち米もちごめ、もちこめ、もちよね、もちまい、餅米、糯米)とは、コメの品種のうち、アミロースを全くあるいはほとんど含まず(糯性)、調理時に強い粘り気を示すもの[1][2]の原料になるほか、赤飯、おこわなどの料理に使われる。

概要[編集]

もち米、長粒種、生
100 gあたりの栄養価
エネルギー 1,549 kJ (370 kcal)
82.0 g
糖類 5.8 g
食物繊維 2.8 g
0.5 g
7.00 g
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。
出典: USDA栄養データベース(英語)

米に含まれるデンプン分子には、粘りの元になるアミロペクチンと、粘りを生み出さないアミロースがあるが、もち米はアミロペクチンのみを含むため調理時に強い粘り気が生じる[3]。そのためもち米は餅の原料になる。

もち米に対し、アミロースを含む粘り気が少ないコメをうるち米(粳米、うるちまい、うるごめ)、(うるち、うる)という。うるち米が主要部位の胚乳が淡い半透明であるのに対し、もち米の胚乳は白く不透明である。栄養学的には、もち米とうるち米との差はほとんどない。これは消化の過程でアミロペクチン・アミロースともに分解されてしまうためある。うるち米でも炊いた米をお湯に漬けてアミロースを抜くことでを作ることができる。

もち米は餅の原料になる他、赤飯おこわ飯蒸し、中華風のちまきなどの料理や、粉砕して白玉粉道明寺粉などに加工した上であられ団子などの菓子の原料に用いられる。また、醸造原料としても用いられる。

主に日本朝鮮半島中国台湾フィリピンタイ王国ラオスインドネシアインドベトナムミャンマーなどで栽培されている。タイのイーサーン地方やラオスでは主食とされ、ラオスではコメの生産量割合の85%を占める。地域によってはハレの食材とされる。日本などではジャポニカ種(短粒種)のもち米が栽培されるのに対し、東南アジアではインディカ種(長粒種)のもち米が多く栽培される。また、果皮の黒い黒米のもち米もある。

日本においてのコメの生産量割合では全体の3% - 5%程度である。都道府県別の生産量は多い順に佐賀県北海道新潟県熊本県岩手県である(平成21年度調査)[4]

漢字の「糯」「餅」はどちらも訓読みでは「もち」であるが、本来「餅」はモチ性の穀粒などを蒸した上で搗くなどして作られた食物を指すのに対し[5]、「糯」は作物の品種を指す[1][6]。「糯」の一字でもち米を意味することもある[7]。近年は「餅米と表記されることもある。

イネ以外の植物でも、トウモロコシ、オオムギ、アワキビモロコシアマランサスなどには、糯性を持った品種がある[1]

主な品種[編集]

もち米の主な品種(年代順)
種別 登録番号・名称 地方番号(旧系統名) 交配品種 育成機関 登録年 備考
水稲 羽二重糯
大正糯
藤蔵糯
旭糯 愛知糯1号/京都旭 愛知県農事試験場
こがねもち 中新糯40号 信濃糯3号/農林17号 新潟県農業試験場 1956年
みやこがねもち
水稲農林糯144号(マンゲツモチ) 関東糯64号 F3 249/農林糯45号 埼玉県農事試験場 1963年
水稲農林糯145号(カグラモチ 関東糯66号 F3 249/平六糯 埼玉県農事試験場 1963年
喜寿糯 42-6 35-8/幸風 愛知県農業総合試験場作物研究所 1970年
水稲農林糯216号(ヒヨクモチ 西海糯118号 ホウヨク/祝糯 農研機構(旧九州農業試験場) 1971年
水稲農林糯221号(ヒメノモチ 奥羽糯277号 大系227/こがねもち 農研機構(旧東北農業試験場) 1972年
水稲農林糯233号(クレナイモチ 西海糯129号 ホウヨク/祝糯/コシヒカリ 農研機構(旧九州農業試験場) 1974年
水稲農林糯254号(ヒデコモチ 奥羽糯296号 大系糯1076/ふ系72号 農研機構(旧東北農業試験場) 1979年
もちひかり 信交糯135号 みすずもち/トドロキワセ 長野県農事試験場 1985年
はくちょうもち 北育糯80号 上育糯381号/おんねもち 北海道北見農業試験場 1989年
水稲農林糯317号(峰の雪もち 北陸糯141号 奥羽302号/ヒメノモチ 農研機構(旧北陸農業試験場) 1992年
陸稲 陸稲農林糯55号(トヨハタモチ 陸稲関東糯137号 石系201号/ワラベハタモチ 茨城県農業試験場 1985年
陸稲農林糯60号(ゆめのはたもち 陸稲関東糯168号 陸稲農林糯4号/陸稲農林糯4号/陸稲農林糯4号 茨城県農業総合センター 1996年

ギャラリー[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c 農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』(農山漁村文化協会、2006年) p.1525
  2. ^ 渡部忠世・深沢小百合『ものと人間の文化史 もち(糯・餅)』(法政大学出版局、1998年) p.2
  3. ^ 農業・生物系特定産業技術研究機構編『最新農業技術事典』(農山漁村文化協会、2006年) p.1126
  4. ^ 特集1 おもち(3)農林水産省
  5. ^ 渡部忠世・深沢小百合『ものと人間の文化史 もち(糯・餅)』(法政大学出版局、1998年) p.3
  6. ^ 渡部忠世・深沢小百合『ものと人間の文化史 もち(糯・餅)』(法政大学出版局、1998年) p.3
  7. ^ 『大修館漢語新辞典』(大修館書店、2001年) p.917

関連項目[編集]